ぐうたらの私が異世界で帽子屋(マッドハッター)になる
第19章 第十九話
「もちろんお返しするさ。せっかくの久しぶりの来客だから、もっとゆっくりして欲しかったけどね」
「もう、嫌いお前!!!」
シオがチェシャーに威嚇する。
「ふふふふ。愉快愉快。…では皆様、ごきげんよう」
そう言ってチェシャーがうやうやしく礼をすると、私たちの周りに黒い煙が湧いてきた。
…帰れる。一安心したのもつかの間だった。
ザク
足が地面に着くと、なんとそこは雪国だった。
「さ、さむーー!!」
ダウニーさんが一番に声を上げた。
「チェ、チェシャーの奴、どこに連れてきたのぉ??」
私も震えながらあたりを見回す。
一面銀世界の平野だった。数センチ、雪が積もっている。
「今までいたファフニール国は雪が降らない国だったから、もしかしたら越境している可能性がありますね」
「とにかくどこかの町に行かないと、凍死しそうです!!」
と私が言うも、どちらに進めばいいかもわからない。
「とりあえず防寒を付与した帽子出しますね!!」
久しぶりに人前で帽子を出した。
皆さん食い入るように見てた。
出てきたのは、もこもこふわふわした帽子。
「ローブがいいですね。すみません」
「「「「いや、たすかる」」」」
全員分出して皆で被った。
わずかに暖かくなった気がする。
「ママ、寒い…」
手に息を吹きかけながら、シオは言う。
「誰かがこちらに来るぞ」
リックがはるか遠くを指さして言った。
皆一斉にそちらを見る。
私は眼があまりよくないので、しばらく見えなかったが、確かに馬に乗った人がこちらに向かってきていた。
そして目視できる距離になったところで、私はその人物に見覚えがあることに気づいた。
「セカ…」
私は思わず帽子を目深に被った。
金の髪、蒼い瞳。一層精悍な顔立ちになったセカだった。
「このようなところで、そのような恰好で何をしている?」
聞かれてもおかしくない質問だが、全員何と答えたらいいのかわからず逡巡した。
…ここはきっとフェンリル国だ。
私は確信を持ってそう思った。