ぐうたらの私が異世界で帽子屋(マッドハッター)になる
第13章 第十三話
「そうですね。私が見る限り、この帽子には魔法の気配はありません」
「…え、そうなんですか?でも、使うとき、私は変な気配を感じます」
他の帽子で試したことはないけど、きっとできないだろうと思ってるし、あの金眼の男の気配を感じるし…。
「『妙な気配』というのが、とても気になりますが、長年魔法職をやっている私が見ても、この帽子には何も感じませんね」
と言って、私にシルクハットを返した。
「そして、この前いただいた防火頭巾は本当に素晴らしかったですよ」
ああ、ミスリルなんとかの皮の頭巾だったっけ。なんかガスマスクみたいなやつ。
「火を防いでくれましたか?」
「それはもう。…皮自体も素晴らしいのですが、その頭巾にも強い火の守りの魔法が施してありましてね」
「え!!?火の守りですか…?」
このシルクハット、そこまで有能なんだ…、こわ。
「また、出していただいてもいいですか。今度は防毒頭巾をお願いします」
なぜか仕事の話になると、敬語になるお茶目なおじさんだなーと思いました。
そんな話が夕方まで続き、夕飯の時刻に。
「そろそろ、夕飯時だね。広間に、君の婚約者が待ってるよ」
そう言われて、私は一瞬セカの顔が浮かんで、ブンブンと頭を振った。
部屋に入ると、いつもよりかしこまった格好をしているユラくんがいた。
声をかけていいのかわからず、私は上目遣いで軽く会釈をすると、彼も軽く会釈した。
「君たちもだいぶ仲良くなったみたいでうれしいよ。未来の僕の娘と息子だもんね」
「シアン様とは少しの間過ごさせていただき、打ち解けてきたところでございます」
そう言ってうやうやしく礼をするユラくん。
「まあ、席についてくれ」
その言葉を聞くと、ユラくんは流れるような動きで私をエスコートして席まで案内してくれた。
「あ、ありがとう…」
あーきたよ。会食タイム。
正しいのかわからない、テーブルマナー。
私はだいぶ固い動きで食事をしていた。食べた気しない…。
ぎこちない動きを察したのか、ユラくんが私に目で合図してくれて、使うべきフォークを教えてくれた。
その後からは、困ったらユラくんを見つつ食事ができた。
デザートを食べ終わると、ラドクリフ様は嬉しそうに頬杖をついて言った。