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ネコの運ぶ夢

第12章 夢幻のネコ


☆☆☆
「あんまり期待するなよ?」

繁華街の居酒屋、谷山が音子の写真を手に言う。そう言うな、お前しか頼れない。
谷山翔一は俺の高校時代から付き合いのある数少ない友人だ。小さいながらも出版社勤務で、いわゆるマスメディアに携わっている人間だ。
俺のコネで誰かの個人情報を調べようとすれば、思いつくのはこいつに頼るくらいだ。

「で?どういう関係なわけ?」
まあ、聞くわな、当然。
「拾った」
「は?」
「家の前に落ちてたんだ」
「ラピュタかよ!」
「いや、地面に直接だ」
別に天から落ちてきたわけではない。同じ年の人間にしか通じないような軽口が言えるのも、こいつのいいところだ。
「はあー。こんな可愛い子がね。しばらく同居を?それで、いなくなったと」
「身元、事情、なんでもいい、手がかりが欲しい。警察には言わないでほしいと言っていたからなにか訳ありかも知れない」
「面倒な女かもしれないな」
「犯罪絡みではないと信じたいが・・・」

その辺は定かではない。でも、音子と暮らしてからこっち、あいつからいわゆる「反社」の匂いは全くしなかった。どちらかと言うと満員電車にも乗ったことない、スマホの扱いにも慣れてないなど、「お嬢様」という方が近いような気がする。

「ふーん。まあいいや、両面から聞いてみるか。ただ、最初に言ったように、あまり当てにするなよ。あと、ここ、奢りな」

ああ、わかったよ。頼むよ、谷山。もう一度言うが、お前だけが頼りだ。
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