第14章 可哀想な2人(相澤消太)
店員にデカめの声で注文する女性に消太は疑問をぶつけた。
「そっちの彼女、どうしたんですか?」
「あー……この子、ちょっと不幸続きっていうかなんていうか……ちょっとエグいですよぉ?」
自分の事を、陽菜と名乗った女性が繭莉とやらの不幸について語り始めた。
繭莉と陽菜は同じ23歳。
繭莉は高校卒業と同時に芸能事務所に所属して、俳優を目指しているらしい。
しかしこれが、鳴かず飛ばずでオーディションも落ちまくる。
つい最近も朝ドラのオーディションに落ちてしまって、このまま売れないんじゃあ事務所を辞めさすぞと社長に言われたそうだ。
そこで生活の命綱はアルバイトだ。
しかし、この不景気で2か月前にアルバイトを突然クビになったという。
それと同時期に、付き合っていた男に異変が起きる。
詐欺に遭ってしまって500万円必要だと相談されたらしい。
素直に繭莉が貯金を切り崩して500万彼の口座に振り込むと、いきなり蒸発した。
つまり、繭莉は詐欺に遭ったという詐欺に遭っていたのだ。
仕事も貯金も彼氏も無くなって、家賃も今月分滞納しているらしい。
水道も電気もいつ止められるか分かったもんじゃない。
「……っうー……」
もう既にしたたかに酔っているのだろう。
ずっとテーブルに突っ伏したままで泣き続ける繭莉を見て、消太は思った。
確かにエグい。
自分の失恋話なんて、彼女の不幸の連続に比べたらかわいいもんだ。
「お待たせしましたーハイボールでーす!」
消太は、運ばれてきたグラスを持つと、一気に喉にハイボールを流し込んだ。
何だか、そんな話を聞いてしまったら飲まなきゃやってられないと思ってしまったのだ。
「わ!すっごい一気!お兄さんも、やな事でもあったんですかぁ?」
陽菜にそう聞かれて、ここが不幸自慢の場になりそうだと一抹の不安を抱えながら消太は素直に答えた。
「さっき、彼女にフラれた」
「……え……」
フラれた、というワードに反応した繭莉が顔を上げた。
その顔を見て、消太は驚いた。
もう泣きすぎて目が真っ赤だとか、メイクが崩れそうとかどうとか、そんなのではなかった。
繭莉は、消太の好みの顔をしていた、相当。