【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第3章 When It Hurts to Love
「……静かに。」
低く、抑えた声。
研磨の吐息が近い。
仁美は驚きと困惑で固まったまま、言葉を失う。
一気に張り詰めた空気の中、体育倉庫の外、なにかがかすかに動く音がした。
仁美は研磨の手の中で固まった。
体育倉庫の薄暗い空気のなかで、外に“誰か”の気配があるのが、はっきりと分かった。
ごくり、と小さく喉が鳴る。
研磨の指先がその音さえも制するように、もう一度口元を押さえる。
仁美はそのまま、鼓動の音すら殺すように息を止めた。
外からは、途切れ途切れに小さな声が聞こえる。
二人分。
男女––––間違いない。
(聞いちゃだめ……。)
分かってる。分かっているのに、耳が勝手に声を拾おうとする。
音の輪郭を必死に追いかけるように、意識が外に引っ張られていく。
外から聞こえる声は、風に揺られるように小さく、ときどき早口になったり、詰まったりしている。
その声に仁美の息が一瞬止まった。
彼の–––––黒尾の声だ。