第2章 前世
「兄者、暇〜」
夜叉椿は欠伸をすると伸びをした。隣にいる双子の兄、惣闇がため息を吐く。
「椿、今俺達は何をしている?」
「門番だけど、もう100年も戦ないじゃん」
村の門番になって300年。この兄妹が門番になってから、村が奇襲されても突破されることがなくなった。何百、何千と敵兵が来てもだ。
「空が青いな」
「兄者も飽きてきてるじゃん」
「夜叉椿、惣闇。長老がお呼びだ」
長老の息子が夜叉椿達を呼びに来た。
「誰もいなくなっていいの?私が残ろうか?」
「少しの間だ、問題ない」
夜叉椿と惣闇は顔を見合わせる。長老の家へと向かう。ヒソヒソ声が聞こえる。この兄妹を恐れている鬼もいるのだ。目が合えば、逃げて行く。惣闇は隣を歩く夜叉椿をチラリと見る。
「ん?何、兄者?」
気にもしていなかった。
「夜叉椿に惣闇。欲しいモノはないか?」
長老が聞いてくる。突然どうしたのか。
「お前達が門番になり早300年。平和が続いているのはお前達のおかげだ、感謝する」
そう言うと長老は頭を垂れる。息子も同じ仕草をした。
「欲しいモノって何でもいいの?」
夜叉椿が問うてきた。
「ああ、何でもいいぞ」
「兄者、私人間になりたい!」
目をキラキラさせながら、夜叉椿が言う。
「椿…、モノだからそれは無理だ」
「無理ではないぞ」
長老はゴソゴソと懐からある物を出した。色鮮やかな短冊が3枚。それを見た惣闇は驚愕する。
「何故それがここに!?」
色鮮やかな短冊はただの短冊ではない。何でも願いを叶えてくれる短冊なのだ。
「昔、戦利品で貰ったこと忘れていてな。終活してたら、出てきたのじゃよ」
ホホホと笑う長老。
「よく、考えて使いなさい」
惣闇が色鮮やかな短冊を受け取る。
「何で人間になりたいんだ?」
帰りながら、惣闇が夜叉椿に尋ねる。
「ん?だって儚くて凄くキラキラしてるじゃん」
人間は寿命が短い。短いなりに生きている。そんな人間に魅了されたのだ。だから夜叉椿も人間になりたいそうだ。
「お願い兄者、私人間になりたい」
妹の願いを断ることができない惣闇。はあ、とため息をつくと、1枚短冊を夜叉椿に渡す。
「人間になりたいのは分かった。書く内容を考えよう」
特記事項は重要だ。