第30章 そういうこと
しまった。まだ、虎杖に小沢のこと言っていない。これだけの変化。絶対誰だか分からない。それは久しぶりに再会した憧れの人に、「誰?」と言われたくない台詞No.1だ。釘崎は慌てるが。
「あれ、小沢じゃん。奇遇〜。なにしてんの?」
10点満点中の10点満点の解答だった。何げない話をしてすぐに小沢とは別れた。
「本当にいいのか?せめて、連絡先だけでも」
「私とは交換したし、まぁ大丈夫でしょ。それよりロロ、伏黒、私ようやく自分の気持ちに気づいたわ。私が彼氏を作るより先に、虎杖に彼女ができるのがなんかムカつく」
「野薔薇らしい」
「あっそ」
「映画行こー」
ロロ達は映画に行くことになった。今大ヒット作の映画を観ることになり、ポップコーンを買って席に着く。映画が始まり、スクリーンを眺める。ロロはゆっくりと目を閉じて目を開けた。宿儺の生得領域にいた。いつもの様に、頂で頬杖をついている宿儺。鬼のお面を付けて、宿儺の側まで行くと、宿儺を押し倒した。宿儺は黙ってロロを見つめる。
「宿儺の子供がほしい」
鬼のお面を外して、宿儺と目を合わせる。宿儺はいつものように鼻で笑うことも、からかうこともしない。
「宿儺?」
「…黙れ、余計なことを言うな」
そう言った宿儺自身が、すでに余計なことを考え始めていた。宿儺とロロの子供。頭の中に、勝手に未来が浮かぶ。小さな手。宿儺の指を握ってくる、あまりにも小さな存在。宿儺の眉が僅かに動く。さらに想像してしまう。自分に似た目をした子供が、こちらを見上げている。「父上」と呼ばれる。宿儺は突然、顔を背けた。しかも一度想像してしまったせいで、止まらない。少し成長した子供が宿儺の後ろをついて歩いている。転べば、反射的に手を伸ばしてしまう自分。夜になれば、眠った子供を抱き上げる。そんな自分の姿まで想像してしまい、宿儺は額を押さえた。
「どうしたの?」
「ロロ、とんでもないことを言った自覚はあるか」
「子供がほしいって言っただけだけど」
「それだけではない」
宿儺は低く呟く。
「…未来まで見せられた気分だ」
「未来?」
「俺が子を抱いている」
「…ふふ」
「笑うな」
押し倒されて、今度はロロが下になる。宿儺の首に腕を回し、ロロと宿儺はキスをした。