第68章 偽りの日々〜冨岡義勇 時透無一郎
あれから一ヶ月が経とうとしていた。
足首の怪我は、すっかり治りゆきは、蝶屋敷の皆んなともすっかり仲良くなっていた。
「ゆきさんお洗濯の手伝いはいいです…無理をするとまた怪我が悪化しますよ。」
アヲイが、洗濯を手伝うゆきを困った様子で見ていたゆきは、台に登り高い場所にシーツを干そうとしていた。
その時バランスを崩してゆきは、台から落ちそうになった…
「危ない!ゆきさん!!」
アヲイの声が響くのと同時にゆきを、義勇が抱きとめていた。
「流石です。冨岡様」アヲイが、淡々とした口調で胸をなで下ろす。
「冨岡様、ゆきさん元気になってきたからって私達の雑用を手伝ってくるんです…しのぶ様に叱られるのでそのまま抱えて部屋に連れ帰ってください!」
「承知した…」
「降ろしてください」
「部屋まで降ろさない」
ゆきを抱えたまま義勇は、部屋の扉を開けると、扉のすぐ隣に置かれた椅子に座り、ぼんやりと外を眺めていた無一郎が、ゆきの気配に気づいて顔を上げた。
「あっ…おかえり」
無一郎は近づこうとはしない。あの日、無一郎が近づいた時に、ゆきが怖がるのを目の当たりにして以来、無一郎はこの距離を頑なに守っていたからだった。
「冨岡さん、わざわざここまでゆきを送ってくれたんだ、暇なんだね」
無一郎の毒づく言葉に、義勇は表情ひとつ変えずに答える。
「ゆきが転びそうになった。まだ安静が必要だ。足は完治ではない。」
冨岡さんはこうやって、いつもゆきの事を一番に知ってるふりをする。腹が立つ…。僕だって足の怪我の治り具合は知ってる
無一郎は椅子から立ち上がりかけたが、ふと足を止め、握りしめた拳を袖の中に隠した。
どうして…? 僕はあんなに拒絶されたのに、冨岡さんには抱きかかえられても大丈夫だなんて…
どうして僕じゃダメなんだろう。何が、僕と冨岡さんとで違うの?
いつ血鬼術の毒は解けるの… 僕はいつゆきに触れてくちづけができるの?
もう一ヶ月…そろそろ我慢も限界かも…
そんな無一郎の心内をよそに
義勇は、ゆっくりと抱きかかえたゆきをベッドに寝かせてあげて部屋を出て行った。