第68章 偽りの日々〜冨岡義勇 時透無一郎
しのぶが去った後、義勇は病室の扉を閉め切り、震えるゆきを逃がさないようにベッドの上で引き寄せようとしたが…
ゆきは乱れた浴衣を直し、青い顔で首を振る。
「離してください。私には、無一郎くんがいるから…やめてください」
無一郎の名を出し、膝の上から逃れようとするゆき。
しかし、義勇はその細い腰を強引に引き寄せ、自分の膝へと跨がらせた。
「今はあいつのことは忘れるんだ。」
逃げ場を塞ぐように抱きしめられ、観念したゆきは涙を浮かべて問いかけた…
「義勇さん。私は、しのぶさんの言う通り…義勇さんを誘っているのでしょうか。こうして、男の人の情けを引くような卑しい振る舞いをしていますか?」
義勇はやるせなくなりゆきの首筋に顔を寄せた。
「ぎ、義勇さんっ?やめてくださいっ…お願い離して」
義勇は、そんな言葉を聞かず今度は、唇をゆきの耳元に寄せ
「誘っているのは、俺の方だ。お前が隙だらけなのではない。」
耳元で囁かれる甘い声…義勇は震えるゆきの背中を大きな手で撫で続け、独占欲を露わにする。
「そんなに自分を責めるなら、いっそ俺を好きになれ、時透のことも、心無い言葉も…すべて俺が忘れさせてやる」
「ぎ、義勇さん?何を言ってるんですか…は、離してください。それに…なんだか怖くなってきました…だから」
義勇は、やめない
大きな手がゆきの頬を包み込み、ゆっくりと顔を上に向かせた。
可愛い顔…綺麗な瞳…この甘いお前の香り…俺はお前が堪らなく愛おしいから、いつも俺から仕掛けている…
愛欲に溺れて卑しいのは、この俺だ…
「やめて、ください…っ」
重なりそうな唇を必死に拒み、ゆきはガタガタと身を震わせた。
山賊に襲われた際の悍ましい記憶が蘇り、視界が恐怖色に染まる…。
「触らないで…怖い…っ!やめてお願いします」
悲鳴に近い拒否に、義勇の動きが止まった。
我に返った義勇は、自身の独占欲がゆきを追い詰めていたことに気づき、胸が締め付けられる…。
義勇は力を抜き、優しくゆきを包み込んだ。
「すまない。怖がらせるつもりはなかった」
ほら、胡蝶今もこいつが誘惑してきたんじゃない…俺がこいつを誘惑している…