第68章 偽りの日々〜冨岡義勇 時透無一郎
義勇の指先が、ゆきの足首に触れたまま止まる…俺が唯一今お前に触れることのできる男じゃなかったのか?
「不死川なら、怖くないのか」
先ほどすれ違った不死川の、照れたような表情を思い出す。
ゆきが心を開き、恐怖を感じずに受け入れた特別な存在が自分だけではないというのか…?
「俺がかけた清らかだという言葉だけでは足りなかったのか?」
義勇は、不死川が触れていたであろう場所を、ゆっくりと撫でた。
「あいつに触れられて頬を赤く染めたのかと思うと、胸が騒ぐ…」
「き、急にどうしちゃったんですか?義勇さん?不死川さんは、あの…山賊から助けてくださったし…お兄さんみたいな感じなんです!」
義勇の指先が、ゆきの足首をなぞりながらゆっくりと太ももへとのびる
「不死川は兄で、時透は婚約者か…俺はただの師範?」
「ぎ、義勇さん?」
浴衣の合わせが義勇の手によって乱されゆきの太ももが露わになる…
すごく、距離も近くゆきの鼓動が悲鳴をあげる…
何だか怖い動悸もしてきたよ
嫌だよ
こんなの
怖いよ…突き放してもいいかな?義勇さんを…
その時
「あらあら、そこまでにしてください。ここは病室ですよ」
しのぶは迷いなく部屋へ入り、義勇の手をゆきから引き離した。
「冨岡さん、接触しすぎです。彼女はまだ治療中の身。精神的な安静が必要だと、以前もお伝えしたはずですが?」
「胡蝶」
しのぶは、次は固まるゆきへと視線を向けた。
浴衣が乱れ太ももを露わにしたゆきを冷ややかな目で見下ろすと、ため息混じりに言葉を吐いた。
「それから、ゆきさん。あなたもです。そうやって無自覚に男を惑わすような目をするのは、おやめなさい」
「え…?」
思いもよらない言葉に、ゆきは目を見開く…
「そんな風に誰にでも擦り寄るような視線を向けるから、山賊にまで犯されたのではないですか…」
「胡蝶!!」
義勇がこれまでに聞いたこともないような怒りに満ちた声をあげすぐにゆきの耳を塞ぐようにぎゅっと抱き寄せ、しのぶを睨みつけた。
「今の言葉…取り消せ。たとえ胡蝶でも、許さない!言って良い事悪い事がある。言葉は選び方で人を傷付ける」