第113章 決心〜冨岡義勇【微R】
目を開けた途端、間近にある義勇の顔と頬に触れる温もりに気づき、ゆきは弾かれたように上半身を起こした。
「驚かせてすまない」
そう言いながらも、義勇は恐る恐るゆきの頬へ手の甲を添えてくる。
「ぎ、義勇さん……やめてください!」
ゆきは反射的にその手を振り払った。
払いのけられた手が空中で止まり、義勇の瞳に切ない陰が落ちる。
あの嵐の夜…私が不覚にも媚薬を飲んでしまい、理性を失って義勇さんに抱かれたことが、すべての狂いの始まりだった。
お腹に宿る命が、無一郎くんの子なのか、それともあの過ちの夜の義勇さんの子なのか……答えの出ない苦しみが胸を締め付ける。
昨夜戻ってきた無一郎くんには、言えなかった。
一人で抱え込み、どうすべきか激しく苦悩するゆきを、義勇はすべて察していた。
「…幸さんは?」
「幸は先に帰らせた。お前が眠っていたからな。明日診察してもらえ」
「そうですか…」
ゆきは、決して義勇と目を合わせなかった。
義勇は、真実を言えずに思い悩むゆきの葛藤を痛いほど感じ取っていた。
「ゆき、体調は大丈夫か? どこか痛むところは…」
「…大丈夫です」
そっけない返事しかできないゆきに対し、義勇は静かに息を吐くと、苦しげに言葉を紡いだ。
「あの夜、俺がお前を抱いたことで…時透にも言えず、お前を一人で苦しめている。すまない…。だが、たとえお腹の子が時透の子であろうと、俺の子であろうと、俺はお前とこの命を守る。お前に拒まれようと、それだけは変わらない。」
低く真摯な声が部屋に響く。
「守るってどうやって?私は無一郎くんの婚約者…いずれ鬼との戦いも終われば結婚します。」
「では…俺の子かもしれないその命を時透に、委ねると言うのか?真実を伏せて…」
ゆきは、涙を浮かべる…。
「いえ…だから…結婚となる前に…無一郎くんと…お別れします。」
義勇は、驚きゆきを見据えた。
「別れる?」
「はい…。」
「…どうするつもりだ?」
ゆきが、ゆっくりと義勇と目を合わせていく…ゆっくりと…
「出ていきます。そしてお腹の子と二人で暮らそうと思っています。」