第112章 言えない〜時透無一郎 冨岡義勇【R強強】
「…ゆき、体のどこかが悪いの?怪我でもした?」
その質問に、胸がドキリと大きく跳ね上がった。
お腹に宿る小さな命
私はこの命が無一郎くんの子だと信じたい。
けれど…私は、知らない間に義勇さんに抱かれていた。
いくら薬を飲んでいたからだと言っても義勇さんを受け入れてしまった。
だからこそ、この子があなたの子だという確信が持てない。
酷い女なの…
そんな恐ろしい事実、口が裂けても言えるはずがなかった…。
「ううん、疲れちゃったのかな…ちょっと、調子が悪くて」
俯きながら答えると、無一郎は胸を痛めたように悲しげな表情を浮かべた。
「僕のせいだ…。君が何度も手紙を送ってくれていたのに、僕は一通も受け取ることが出来なかった。美月に、全部燃やされていたんだ…」
「え…?」
思いもよらぬ名前に、息を呑む。無一郎はゆきの震える手を包み込み、悔しそうに言葉を続けた。
「銀子に頼まなかったでしょ、手紙」
「う、うん…。無一郎くんの任務で忙しいかと思って…」
「美月が僕の代わりに伝達の鴉から手紙を受け取って、僕の目に触れる前に燃やしていたんだ。僕が返事を書かずにいたから君は不安になって…こんな、体調まで崩してしまったんだ…きっと…。」
事実を知り、言葉を失う。美月の嫌がらせで連絡が途絶えていたのだと知り、胸が締め付けられた。
無一郎くんは何も悪くなかったのだ。
「そんな…無一郎くんのせいじゃないよ。わざわざ帰ってきてくれて、ありがとう…大変なのに」
ゆきは愛おしさに胸を詰まらせ、無一郎の胸へと顔をうずめた。
その時もう一つの足音が聞こえた。
「時透?騒がしいと思い来てみたら…任務はどうした?」
無一郎の胸元に顔を埋めていたゆきは、その声を聞き顔を上げた。
無一郎は、ゆきから手を離すと義勇の前まで歩み寄った。
「冨岡さん、お世話になっています。昼間はうちの道場で稽古しているんですよね?」
「ああ」
「ゆきには、手を出していませんよね?」
直球なその質問に、ゆきの心臓が早くなる…。義勇は、まったく表情を変えずに無一郎に言った。
「さあな…」
その返答に、明らかに無一郎は苛つきをを露わにしていた。