第111章 届かない手紙〜冨岡義勇【微R】
美月は、尻もちをついたまま驚いた表情で、声もなく固まった。
「痛い? 自業自得だよ! 君は絶対にやってはいけないことをしたんだ」
冷静な眼差しで見下ろす無一郎の言葉に、美月は涙を浮かべ、必死に首を横に振る。
「なんの…ことですか? 私はただ、無一郎様のお役に立ちたくて…!」
「ゆきから届いた手紙、どこに隠したの?君が持っているんでしょ?」
その名を口にされた瞬間、美月の顔からすっと血の気が引いた。
喉が引きつり、呼吸すら忘れたように息が詰まる。
なぜ分かってしまったのか、完璧に隠し通していたはずなのにと、絶望が脳内を駆け巡る…。
動揺を隠せない美月へ、無一郎は静かに、冷たい一言を重ねた。
「おまけに、僕に成りすまして手紙をゆきに書いたでしょ? 僕の筆跡を真似て、一体何を書いて銀子に届けさせたの?ゆきを傷付ける事を書いたの?」
「ち、違います! 私はただ、無一郎様に余計な雑念を捨てほしくて! あんな女からの便りなんて、無一郎様のお邪魔になると思ったから…!だから…もう…手紙は、送るなと書きました…。」
言い訳を叫ぶ美月の声を、無一郎の無機質な視線が遮る。
「僕とゆきの絆を、君ごときが踏みにじるなんて…絶望したよ…。」
無一郎は腕の傷から流れる血を気に留める素振りも見せず、美月の襟首を容赦なく掴み上げた。
「今すぐゆきから届いた、手紙を全部出せ!」
その瞳に宿る本物の殺気に、美月は震え上がり、言葉を失った。
「て、手紙は…全部燃やしました……。」
「はっ!?い、今何て?」
「燃やしました…。読んでほしくなかったから、無一郎様に…」
無一郎の怒りは止まらなかった
「何を考えているの!?僕とゆきは、婚約しているんだよ、君が入り込む隙間は決してない!!」
無一郎は、美月にそう吐き捨てると銀子に告げた
「銀子!お館様に今すぐに、『どうしても緊急で屋敷に帰る用が出来ました。鬼の出現はこの数日減っています。二日以内に、すぐにまたこの任務地に戻ります』と伝えて来て!」
「ワカッタワ!!」
そう言い残すと、無一郎は日輪刀を腰に携え足早に美月の実家を後にした。
銀子も同じ様に産屋敷邸の方角に羽ばたいて行った。
残された美月は、その場に崩れ落ちた…。