第109章 妖しい三人の夜〜冨岡義勇【R強強】
物置の中に充満していた濃密な熱気が、わずかに揺らぐ。
暫くの間、大切にゆきを強く抱きしめていた義勇だったが、腕の中で小刻みに震える彼女に気づき、ハッと息を呑んで解いた。
「とにかく、幸には軽率に近づくな。あいつは男だと思え」
自身の嫉妬に呑まれかけた動揺を隠すように低い声でそう言い捨てると、義勇は歪んだゆきの着物を整え、乱れた髪を手ぐしでやさしく梳かした。
先ほどまでの荒々しさが嘘のように繊細で、どこかぎこちない手つき…だがその手には愛情の籠った暖かさがあるのを、ゆきは感じとれた。
「そろそろ俺たちは帰る。…また明日来る」
義勇は静かにそう告げると、ポンポンとあやすようにゆきの頭を撫で、優しくゆきの手を引いて立ち上がらせ、共に物置小屋を出た。
ーー
翌日、義勇と幸は昨日と変わらぬ様子で道場へと現れた。
挨拶もそこそこに、いつものように稽古が開始される。
木刀を振るう幸の動きは洗練されており、昨日の傷などまるで無かったかのように滑らかで鋭い。
義勇と互角に素振りを交わす姿は、まさに一流の剣士そのものだった。
縁側からその光景を見つめるゆきの頭には、昨日、耳元で囁かれた義勇の言葉が何度も、何度も蘇っていた。
『時透がいない間のお前は、すべて俺のものだ…』
今も、手首に残る熱い圧迫感…そして強引に奪われた唇
『…あいつは男だと思え』
整った容姿の陰に何かを秘めている幸の存在と、自分を独占しようとする義勇の強い執着。
無一郎が不在の今、どうしていいのかわからないゆき…。
その時外に稲妻が、光った
その音を合図に、物凄い大雨が降り始めた。
縁側まで吹き込んでくる雨に、濡れてしまいゆきは、慌てて着替えるために部屋へ戻った。
暫くして隠達が、慌ただしくしている事にゆきは、気づいたが雨音と雷の音が凄すぎて何も聞こえない…。
屋敷の廊下を歩いていると義勇とばったり会ってしまった。
「ゆき、すごい雨だな」
「は、はい…」
会話が続かない…気まずい空気が流れる…。
そこに、隠が現れ声をかけてきた。
「あっ!水柱様。本日は夜は嵐になりそうですので泊まれるようにお部屋を用意いたしました。」