第107章 足の怪我〜時透無一郎【R強強】冨岡義勇【R微】
障子一枚を隔てた廊下で、美月はその言葉をじっと聞いていた。
昨夜からずっと立っていたのだった…
胸が張り裂けそうなほどの痛みが襲いかかり、息が詰まる。それでも彼女は、唇を強く噛み締めて耐えた。
大丈夫…これから長い任務に入る。離れている時間は、十分に稼げる
遠く離れた地で戦っている間に、無一郎の心を自分へと向けさせてみせる。
美月はそう決心して、静かにその場を後にした。
一方、部屋の中では昼過ぎの出発に向け、無一郎が旅支度を進めていた。
そんな無一郎の背中を、ゆきはぼんやりと見つめている。
足の裏に負った傷が、ズキズキと嫌な疼きを主張していた。
幸に手当してもらったものの、本来ならしのぶのいる蝶屋敷で診てもらうべきなのかもしれない。
でも……私はもう、鬼殺隊士じゃない
隊員でもない自分が、命を張って戦う隊士たちを差し置いて治療を受けるわけにはいかない。そんな思いが巡り、ゆきは小さなため息をついた。
「ゆき?」
ゆきの視界が、不意に暗くなる。
荷造りを終えた無一郎が近づき、裾の広い隊服でゆきの体をふんわりと包み込むように抱きしめてきたのだった。
無一郎の温もりが直接伝わり、胸がキュッと締め付けられる。
「そろそろ行かないと…」
耳元で囁く声には、名残惜しさが満ちていた。
ゆきは無一郎の背中にゆっくりと手を回し、その熱を少しでも心に焼き付けようと強く抱き締め返した。
「気をつけてね、無一郎くん」
「うん。…すぐに戻るから、待っていて」
重ねられた唇から伝わる愛おしさが、足の痛みも過去の傷も、すべてを優しく包み込んでいく…。
「もし…危ない目にあいそうな時や、不安になったら甘露寺さんを頼ってね。屋敷の隠にも、君の事を頼んであるから。足の裏の傷は、街の医者に頼んであるからその医者に診てもらって。冨岡さんの継子には、もう診てもらわなくていいからね。」
「わかった…。」
「だけど…君がもしどうしようもなくなったら…その時はあの人を……ううん何でもない…。」
無一郎は、言葉を途中で止めた…
すれ違いを乗り越え二人の絆を確かめ合うように、二人は出発の刻まで静かに抱き合い続けた。