第33章 待ちに待った初戦
目の前を走っていく加賀。それを見守る様に雅はコース脇からガレージに戻り、ピット内では三人が用意をし始めた。
「…雅?あとどれくらい?」
そう問われ、即答する雅にリックも二っと笑みを返す。それから少しして加賀のマシンはスピードを落としてピットインしてきた。
三人で手早くタイヤを変えれば、そのまますぐにコースに出ていく加賀。その間一時たりとも雅との会話は交わされずにいた。
「…よかったのか?」
そうリックに声をかけられた雅だったものの、小さく笑って雅は答えた。
「必要があれば城から言ってくるよ」
「応援とか、」
「本当にそれ、今の城に要ると思ってる?リック」
「…だな」
ガシガシと頭を掻けばタイヤのチェックに入った。
「…癖、変わらないなぁ…」
ぽつっと呟けば雅はそっとタイヤを撫でてすぐにモニターに目を移した。
そんな雅を見ながらもグレイはリックに声をかける。
「…雅に『普通の女』の対応はいらねぇよ。少なくともレース中はな」
「…そうみたいだな」
「俺らもよ?サイバーはチーム違ったからよくわからないところもあったけどな。幸いガレージがずっと隣だったんだ。そこで城がクラッシュしても自身のドライバーに怒鳴られるくらい動かなかった。ぶれなかったんだよ。それが今となっちゃ」
「城と一緒だからってか」
「あぁ。」
そういうグレイの話を聞いてリックもフッと表情が緩んだ。
「…たく…ずりぃな」
「ん?」
「マジであいつはなんでも持ってやがる…」
そう言いながらも目を細めてリックは雅の背中を見つめていた。