第33章 待ちに待った初戦
速報を見ながらも打ち込んでいく。嬉しそうににこにことしながらも食事の話など一切耳に届かないかのように仕事モードが抜けない雅だった。
「…おい、雅?」
「んー?」
「行くぞ?」
「あ、そか…」
保存をしてパソコンを畳み、雅は『ごめんね』と誤っていた。
「…聞いてた?」
「聞いてなかった…かも…」
「五人で夕飯。」
「分かった!」
「それ、おいて来いよ?」
「それは!うん!もちろん!」
そう返事をすればトランクルームで着替えをする加賀。他の三人は先に引き上げていった。
「…でも速いね、やっぱり」
「そうか?マシンに恵まれてるだけだろ」
「それだけじゃないよ」
「それによ?」
ジッとファスナーを下ろした加賀はそのままの状態で雅を引き寄せればくいっと顎を持ち上げてキスを交わす。
「待っててくれてんなら、負ける訳ねぇよ」
「…負けてもいいよ?」
「ぁあ?」
「そりゃ、確かに負けるのは嫌だし、嫌だけど…!それでも仕方ない時もあるわけで…」
「まぁな?」
『でも…』と続ける雅の声に着替えだした加賀は振り返った。
「…女の子に絡まれるのは…やだ」
「…クス…絡んでくるようなのはいねぇだろうよ」
「居たら…どうする?」
「心配?」
「…だって…絶対出てくる気しかしない…」
「ならよ?」
着替えを済ませれば背を向けていた雅を後ろから抱きしめた加賀。
「…本戦前だけでも、キスして見送ってくんね?」
「はい?!」
「それだけで絶対、んな子出てくることねぇからよ」
「…そうかな…」
「それとも嫌?」
「…嫌、って…何が?」
「キス、すんの」
「そうじゃない…」
「なら俺が毎回毎回…無事にゴールできるように。」
「キスしなくても、帰ってきてくれるじゃん…」
「おまじないだ、な?」
ちゅっと首筋にキスを落とす加賀は耳元で囁くように話し出す。
「…俺の勝利の女神なんだからよ」
「大げさ…」
「そうでもねぇ」
フッと腕を緩めればトランクルームを後にするのだった。