第20章 神倒し
数時間後、義昭の部下達は命令通り無関係な女性や子供を無理矢理連れて来た。
私が商館の広間で見た様な扱いをしていた。
「義昭様、報告です。織田軍がこちらに進軍して来ました。数は足利軍とほぼ同じかと」
「報告!織田軍により東西に挟まれました!」
次々と来る良くない報告に義昭は痺れを切らした。
「さっさと、羽虫を退治せんか!帰蝶、元就、お前たちは織田軍を蹴散らせてこい!できなくば処刑する」
帰蝶、元就はやれやれと言ったら様子で東西に分けて反撃しに行ったが、義昭の怒りは鎮まらない。ついには女性や子供にまで怒りの矛先を向けた。
「おやめください!」
「お許し下さい!!」
食器を投げ、殴る、蹴る、を見ていた私はある一人の女性に目が止まった。その女性は臨月ではないもののお腹がそこそこ膨らんでいる。その女性めがけて義昭は酒瓶を投げた。
「危ない!」
瓶が頭に当たって痛かったが、妊婦さんに当たってないか、それだけが頭の中にあった。
「大丈夫ですか?どこか当たりませんでしたか?」
「だ、大丈夫です。助けてくれてありがとう。でもあなた、頭から血が‥‥!」
「こんなの平気です。お腹の赤ちゃんの方が大事ですから。さあ、あそこに手を振っている子供がいるでしょう?あそこまで逃げて下さい」
義昭が癇癪を起こしているうちに、太一くんとそよちゃんに連れてこられた人たちを密かに避難させていた。
幸い、近くに兵士がいないため女性は無事に避難できた。
よかったとホッとしているとお腹のあたりをドスっと音がした。
「え‥‥」
太一くんとそよちゃんが顔を真っ青にしてこっちを見ていた。下を見ると。義昭に刺されていた。
「うっ。くっ‥!」
なんとか義昭を引き離し、刺された具合を見る。そこまで深くはないが派手な動きができなくなった。
「この下賤な女め!あの時殺しておくべきだったわ!そこの童を匿いやがって、殺してやる!」
義昭が太一くんとそよちゃんの方に短刀を握って走っていく。
「(身体、動け!動け!ここにいる無実の人達を誰一人死なせない!)」
気を奮い立たせて義昭めがけて蹴りを入れた。