第55章 告げられる想い、壊れていく心 ※
――今まで、体を重ねたことがなかったわけじゃない。
発作のたび、を守るため。
感情を脇に置いて、ただ“必要だから”触れてきた。
それでも、想いだけは伝えなかった。
教師として、同僚として。
この関係に、名前をつけないために。
もし気持ちを伝えてしまえば。
を困らせるかもしれない。
気を遣わせるかもしれない。
クラスの空気が、壊れてしまうかもしれない。
――何より、今の距離が心地よかった。
一番近くにいて、隣に立って、言葉にしなくても通じる場所で、支え合っていけるなら。
それでいい。
それで、いいはずだった。
……そう思い込んで。
相「……」
相澤は、苦く息を吐く。
結局それは、守っていたんじゃない。
――逃げていただけだ。
自分の感情から。
壊してしまう未来から。
手を伸ばす勇気から。
相澤は、ゆっくりとを引き寄せた。
力いっぱい。
逃げ道を塞ぐみたいに。
「……っ……」
の額が、相澤の肩にぶつかる。
その瞬間、張り詰めていたものが、全部決壊した。
相「……ずっと」
震える息。
低く、掠れた声。
相「……気づいてた。自分の気持ちに」
腕に、力がこもる。
相「……それでも、線を引いた。教師だから。大人だから……」
自嘲するように。
相「……卑怯だよな」
は、何も言わない。
ただ、相澤の服を強く掴む。
相「……でも」
相澤は、の額に額を押し当てた。
相「……もう、無理だった。失いかけないと、言えないなんてな…」
静かに。
それでも、はっきりと。
相「もう一度、聞いてくれ…」
そっと、唇が触れる。
深くない。
確かめるような、震えるキス。
相「……好きだ」
一拍。
相「……ずっと前からだ」
の喉が、小さく鳴る。
相澤は、息を整えるように続ける。
相「……守るって決めてた。支えるって決めてた。それ以上、望まないって……」
声が、わずかに崩れる。
相「……でも、もう抑えられない」
そして、最後に。
相「……愛してる」