第35章 ぶつかる本音、譲れない想い
相「仮免試験を終えたその晩に喧嘩とは…元気があって大変よろしい…」
低く静かな声。
けれどその奥に潜む怒気は、捕縛布よりも重かった。
2人は座らされ、ぐるぐると縛り上げられている。
完全に逃げ場なしの状態だ。
「消太さん…い、一応俊典さんからの伝言で…」
爆豪がオールマイトの引退を負い目に感じていたこと。
それを抱えたまま試験に臨ませた結果、爆豪の劣等感が爆発。
気付けずメンタルケアを怠った大人の失態が招いた喧嘩だった、と。
捕縛布が一瞬、緩んだ。
相「だからルールを犯してもしかたない…で済ますことはできません。しかるべき処罰は下します。先に手を出したのは?」
爆「俺」
緑「僕も結構…ガンガンと…」
相「爆豪は4日間、緑谷は3日間の寮内謹慎!その間寮内共有スペース清掃!朝と晩!プラス反省文の提出!怪我についてはに頼るの禁止。どうしても痛ければ保健室に行け!ただしばーさんの個性も禁止だ!勝手な傷は勝手に治せ!!」
ふぅ…と相澤は息を吐いた。
相「以上、寝ろ!」
爆豪と緑谷は部屋を出ていった。
2人が去ったあと、静寂が2人を包んだ。
相澤は椅子に沈み、こめかみを押さえる。
相「…やれやれ。ったくほんとあいつらは…」
はそっと隣に立ち、柔らかく微笑んだ。
相澤は黙って目を閉じ、しばらくしてぽつりと漏らす。
相「はぁ…疲れるな」
その声が、ほんの少しだけ弱かった。
は迷わず膝をつき、相澤を包み込むように抱きしめた。
「いつもお疲れ様です」
相澤の身体がわずかに傾く。
緊張が解けていくのを感じながら、相澤は低く囁いた。
相「……あったかいな」
「…消太さんも」
明るい静かな部屋の中、静かな鼓動だけが、2人の間に響いていた。
暫くしてから、も部屋を後にした。