第34章 愛が生む力、蠢く悪意
この仮免試験と同じ日、オールマイトはかつてのヒーローコスチュームを纏い、オールフォーワンの元へ足を運んだ。
救出の際、オールマイトとオールフォーワンはぶつかり、オールマイトの勝利によって幕を閉じた。
それによりオールマイトは引退、オールフォーワンはタルタロスへ収監された。
タルタロスとは、地下深く、幾層ものセキュリティーに覆われ、徹底的にイレギュラーを排除する監獄。
ギリシャ神話の奈落の神の名に準え、そう名付けられた。
少しでも体を動かせば、部屋に幾つもついている銃口がオールフォーワンへ向く。
バイタルサインに加え脳波までチェックされ、命を握られている状態。
ガラスの壁の向こう、拘束されたオールフォーワンが不敵に笑う。
A「それで?なにを求めている?グラントリノは?独断か?その未練がましいコスチュームはなんだ?まさかヒーローやってるわけじゃないだろうな?」
オ「死柄木…死柄木弔は今どこにいる?」
オールマイトはオールフォーワンとの戦いの最中、死柄木弔がかつてオールマイトの師匠であった志村奈々の孫であることを伝えられていた。
A「知らない。君のと違い彼はもう僕の手を離れている」
オ「貴様は……何がしたい。何がしたかった?」
低く押し殺した声が、ガラス越しの静寂を揺らす。
オ「人の理を超え、生きながらえ、その全てを搾取し、支配し、人をもてあそんで」
握る拳が白くなる。
オ「くんを攫ってまで、何をなそうとした?」
聞いても納得できやしないくせに、と言いながらオールフォーワンは続ける。
A「おんなじさ、君とおんなじだよ。君が正義のヒーローに憧れたように、僕は悪の魔王に憧れた。理想を抱き、体現できる力を持っていた。永遠に理想を生きられるなら、その為の努力は惜しまない。…だからが必要だったのさ」
オ「どういうことだ。なぜ後継を?」