第22章 残された朝、消えない後悔
その頃、相澤は自宅のソファに身を沈めていた。
朝から続いた事情聴取の疲れが、全身に重くのしかかる。
だが、心の中のざわめきは一瞬たりとも静まらなかった。
頭をよぎるのは、の笑顔。
相「……守れなかった」
掠れた声が、暗い部屋に落ちる。
教師として、ヒーローとして、を危険に晒した責任が胸を締めつけた。
冷たい空気の中、拳を握りしめる。
爪が皮膚に食い込み、赤い筋が浮かぶ。
相(あのとき、俺が動けていれば。もっと早く、もっと冷静に判断できていれば)
ただの救出対象じゃない。
同じ時間を過ごし、守りたいと思った仲間であり、信頼を預けた相手………そして大切な存在。
相「…」
その名前を呼ぶ声は、かすれて震えていた。
怒りと後悔と、焦燥が絡み合う。
今何をされているのか──考えた瞬間、視界が赤く染まるほど頭に血が上る。
相(無事でいろ……絶対に……)
警察は言っていた。
その発信機のおかげで居場所は特定できたと。
それでも。
居る場所がわかっているのに、なぜ、なぜ今すぐ助けに行けない?
わかっている。体制を整え、準備を整えなければならないことくらい。
だが、理屈で抑えられるほど、胸の痛みは軽くなかった。
奥歯を噛みしめ、目を閉じる。
脳裏に焼き付いて離れない。
あの日、がネックレスを受け取り頬を染め笑いながら「ありがとうございます」と言った瞬間。
あの時の声が、今は胸を締めつける鎖のように響く。
相(あんな笑顔を、二度と失いたくない)
呼吸が浅くなる。
無意識に握る手に力がこもった。
もしこの光が完全に途絶えたら、自分は冷静でいられるのか。
教師としての立場も、理性も、きっと全部どうでもよくなる。
そんな危うい予感が、胸の奥で静かに蠢いていた。