第18章 …隻眼ノ呪詛
「……だな。ハーデス、そう言やあ、お前、あんまり飲んでなかったみたいだけどよ……酒、飲めんのか?」
「あっ……清酒は、そんなには飲めないです。ちょっとだけ、なら……」
「ちょっとか……じゃあ、取り敢えず乾杯はそれで我慢しとけ。後で違うの持って来て貰おうぜ」
「あっ、はいっ」
嬉しそうに微笑む彼女の顔を見たゾロは、目を伏せ静かに微笑んだ。
三つの盃が、再び軽やかにぶつかる。
乾杯の後、ハーデスがふと思い出した様に、少し改まった口調でゾロに切り出した。
「そう言えば、ゾロがここを出て行った後……日和さんと、家臣の傳ジローさんと言う方がここへ来て、これをプレゼントしてくれたんです。ゾロと私に、是非着て下さいって……」
ハーデスはそう言い立ち上がると、後ろに置いてある二つの風呂敷包みに手を伸ばし、ゾロの横にそっと置いた。
結び目が彼女の手で丁寧に解かれると、中から二着の真新しい浴衣が現れた。
一着は、上品で柔らかな淡いピンク色の浴衣。
そしてもう一着は、ゾロに良く似合う、落ち着いた紺色の新品の浴衣だった。
「日和の奴が……?」
ゾロが驚いて眉を上げる。
ハーデスは視線を落とし、少し恥ずかしそうに微笑んだ。
「はい。日和さんは『先程は恥ずかしいところを見せてしまいましたが、今は麦わらの一味となった貴方を、心から祝福しています』って……そう仰って下さったんです」
日和がゾロへの恋心から見せた嫉妬。
武士の娘としての誇り高い決断を経て、彼女はもう過去に囚われてはいない。
自分の非を潔く認め、ゾロの新しい『大切な仲間』となったハーデスに、そっと手を差し伸べたのだ。
その日和の気高さと優しさを知ったゾロは、ふうっ、と息を吐くと、何処か誇らしい様な気恥ずかしい様な、そんな気持ちで一杯になった。
「それに……日和さんはこうも仰っていました。『もし体調が良ければ、この浴衣を纏って、今夜の花の都の祭りを二人でお楽しみ下さい』って……」
ハーデスのペールパープルの瞳が、期待と戸惑いで揺れる。
(ど、どうしよう……日和さんからこんな素敵な浴衣を頂いちゃった。それに、ゾロと二人で……お祭りに……い、行けるかな……)
彼女の嬉しさと恥ずかしさで満ちた、可愛らしい思念の声がゾロの心に届く。