第21章 君に贈る、ひとときの奇跡
「そういえば、あと数日でクリスマスじゃね?」
トゥワイスの何気ないひと言が、静かな部屋に落ちた。
「ねぇねぇ、仁くん
どうするぅ?パーティしちゃう?」
「おっ、いいね!チキンとケーキと……あっちの俺も呼ぶか?」
「呼べるかぁー!」
「んじゃ、チキンは俺が焼くわ」
「やべぇ、荼毘が焼いたら骨しか残んねぇ〜〜!」
「……あー……」
誰かの吐息混じりの声。
でも、誰も止める者はいない。
くだらない冗談でさえ、この空間の“救い”になっていた。
トガとトゥワイスのやりとりを聞きながら、私はふと思った。
(──“その日”なら、きっと)
ほんの数秒の沈黙のあと。私は口を開いた。
『……じゃあ、当日の買い出し。私、行きます』
クッションの上に膝を抱えたまま、顔は上げない。
でも、声だけははっきりと。
「え〜〜、カゼヨミちゃんってばぁ、珍しく前向きぃ〜♡」
「やっば、テンション上がる!
じゃあじゃあ何が食べたい? オレ、プリン!」
「……パーティの準備にしては、えらく動き早ぇな」
誰かの声がぼそりとこぼれる。
それでも私は、静かに笑って返した。
『せっかくなら、ちゃんとしたもの揃えたいから』
それっぽく聞こえるように、嘘を塗る。
──と、そのとき。
「俺も、行こうか」
背後から届いた静かな声。
振り向けば、コンプレスが立っていた。
仮面を手に下げ、壁にもたれたその表情には──何も書かれていない。
けれど、声だけがやけに静かだった。
「運ぶのも楽になるし……僕の個性、使えるしね」
『……うん、助かる』
「それと。君の“飴玉”、一粒もらいたいなって」
くす、と笑うような声音。
けれどその裏に込められた“了解”の意図を、私は見逃さなかった。
──彼は、なにか気付いてる。
私がこの買い出しを“パーティのため”だけに行くわけじゃないことを。
それでも、黙って見逃すことを選んだ。
私の選択を、“なかったこと”にしてくれようとしている。
私はただ、『お願いします』とだけ返した。
──誰も、本心には触れない。
けれどそれぞれの仮面の下で、静かに何かが、動き始めていた。