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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第30章 「善意の逆理 Ⅲ」


「どうして、千尋だったの? 千尋が何をしたっていうの? あいつらのたわいもない悪意で、千尋は殺された」

「……真澄」

「それなのに、あいつらはのうのうと生きて笑ってる」



たわいもない悪意、その言葉が私の嫌な記憶を引っぱり出した。


(……沙織ちゃん)


都会から村にやってきて、私に優しくしてくれた、大好きだった人。

沙織ちゃんも、そうだった。
村の連中のくだらない僻みと、ねちっこい嫌がらせで、無理やり追い出された。


石を投げる方は、いつだって無自覚だ。
自分たちのたわいもない言葉が、誰かの人生を根本から壊すなんて、少しも思っていない。

いつだって、人間の悪意なんてそんなもの。



「あいつらが千尋に何をしたかは知らないけど」



千尋は自殺している。
そのことを考えれば、あの三人がしたことは容易く想像ができた。



「でもね、真澄」



人間の悪意のくだらなさと恐ろしさ。
呪術師をやっていると、それがどれだけ人を歪ませるのか、痛いほど分かる。
でも、だからこそ。



「人を殺していい理由にはならねーんだよ」



言い終わると同時に、私は地面を蹴った。
左手の指に挟んだ三本の釘を、迷わず真澄へ向けて打ち放つ。


カキンッ!


呪力を込めた釘が、空気を裂いて一直線に飛ぶ。

しかし、真澄の顔の数センチ手前。
空中で三本の釘がバラッと崩れ落ちた。



「……は?」



次の釘を打ち込もうとしていた手が、止まる。

ついさっきまで私の指の間にあった、真新しい釘。
それが、一瞬で形を失ったように、灰黒い鉄粉となって床に散らばっていた。



「……野薔薇ちゃんには、わかってもらえると思ったのに」



真澄が一歩こちらへ足を踏み出すと、靴底が触れたコンクリートの床が嫌な音を立て始めた。
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