第20章 「君の心をさらったその日から**」
「お、おばあちゃんっ!? な、なんで、なにこれっ!?!?」
「何って、コンドームよ。最近のはパッケージが可愛いのねぇ~」
「か、可愛いとかじゃないし!! なんでこんなの持ってるの!?!?」
「女の子だって、ちゃんと備えは必要でしょ? いざというときに男に任せっきりなんてダメよ。自分の身は自分で守らなきゃ」
「いや、いやいやいやっ、そういうことじゃなくてっ……!」
「昔から言うじゃない。転ばぬ先の杖、ってね?」
おばあちゃんは、真顔で何を言ってるの?
実家に帰っただけなのに、どうして性教育の話をされなきゃいけないのよ!
恥ずかしすぎて、顔を覆いたくなる。
「……ほんと、やめてよ。そういうの……」
なんとか抗議の声をしぼり出すと、おばあちゃんはニヤッと笑って言った。
「ふふん、でもね。言っとくけど、おばあちゃんは“彼氏いない”とは思ってないからね」
「……っ」
なんて、鋭い勘。
でも、付き合っている人が担任の先生で。
しかも、“現代最強の呪術師”なんて言ったらどうなるんだろう。
「で、どうなの? 使う予定、ありそう?」
「ない! っていうか、言わせないでよ!!」
なんか、頭痛くなってきた。
……もう、話題変えよう。
「ねえ、おばあちゃん」
湯のみを置いて、気持ちを整える。
「今日は、私ここに泊まるから」
すると、おばあちゃんは手にしていたお煎餅をぽきっと割って、ふわっと笑った。
「大丈夫よ? ひとりでも」
「でも、一応、頭打ったんだよね」
「まぁ、軽くね」
「“軽く”って……っ、病院の先生も言ってたでしょ、数日はめまいとか起こるかもしれないって」
「そうだけど。でも、学校大丈夫なの?」
「今、ちょど夏休み中だし。学校にはもう伝えてあるから」
私はおばあちゃんの目をまっすぐ見て、少しだけ語気を強くした。
「だから……こんなときくらい、私を頼って」
その言葉に、おばあちゃんは一瞬だけ目を細め、
ゆっくりとうなずいた。
「……ありがと、。今日は大人しくしてるよ」
私は、「うん」とだけ頷いた。
そのひとことに、いろんな気持ちを詰め込んで。
「じゃあ、晩ごはん――」
何にしようかと口にしかけた、そのときだった。