第2章 〈天竜人編┃10話完結〉子供時代
〈第1章 ┃03/10話〉【03 現実逃避】1/2P
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死にそうなくらい気分が悪くなって倒れたはずの私が、次に目覚めたのは自分の部屋の自分のベッドの中だった。愛用している布団や小物を見て『落ち着く香りだ』と安堵して寝具に顔を埋める。
誰も近くにいないことにも安心した。
部屋についている大きな窓から見える景色はすっかり暗くなっているのだけれど、恐らく部屋の中で私が寝ていたので、いくつかのランプの淡い光だけをつけていたのだろう。
そのわずかな灯りが今は頼り。恐らく私の様子をうかがうためのメイドさんが何人かいるけれども、とても起き上がる気にはなれない。
([天竜人]……【ONEPIECE】…)
目覚めた後は、あんなにひどかった頭痛やめまいや痙攣もしなくなってヤケにすっきりとしている。そして───今までうそのように色々な記憶があった。
前世で好きだった物や人、物語のことも。それを何度も何度も読み返して、様々な思いを馳せていたことも、今なら分かる。その記憶と感情がたくさん………今の私の記憶や感情のごとくに胸の中にあるのだ。
(なんで……)
どうしてこの【ONEPIECE】の世界に転生したのか。どうしてこんな記憶があるのか。これからどう生きていけば良いのか──
(全然分からないよ……誰か助けて………)
いくら死んだ後の世界とはいえ、いくら大好きだった話の世界とはいえ、なぜか手放しでは喜べない。複雑な思いと絶望にも似た不安に押し潰されそうだった。
(こんなの………[天竜人のシャラーラ]として生きなきゃいけないなら、事実や常識が違うこんな記憶なんていらなかった。〈前世の日本人の一般常識〉なんかがあるから、ここの常識を受け入れられない。もうやだ……)
そうして色んなことを放棄するように、その日は誰とも会わずに、食事も入浴もしないで、泣きながら眠りに落ちた。