第9章 忘れられた子どもたち
「どうしたんだ?」
さっきよりも遠くに声が聞こえる。
じゃあ、今あたしと麻衣の手を握っているのは誰の手なんだ。
「──誰?」
麻衣が呟いた時、壁の向こう側が闇になる。
そして目の前に黒い人影が現れて、バラバラにわかれながら手を掴んできた。
七人ぶんの人影と手だ。
「おねえちゃん」
「どうしたの」
「おねえちゃんたち、だれとまちがえたの?」
あたしと麻衣は勢いよく手を振り払う。
「──臨兵闘者皆陣烈在前!」
「ナウマクサンマンダバザラダンカン!」
九字を切り、真言を唱えると黒い影が歪む。
その隙だと麻衣と手を握って走り出し、あの教室へと飛び込んだ。
二人だけになった。
あたしと麻衣は抱きしめあいながら震えた。
「う〜〜っ……うっ、く……」
「麻衣……泣かないで……大丈夫だから、あたしがいるから……」
泣き出す麻衣を落ち着かせる為に背中を撫でるが、あたしの喉からも嗚咽が漏れ出す。
「だい、っ……ひっ、……だい、じょーぶ……」
泣いたって状態が変わるわけじゃない。
誰も助けてくれないのに、涙が溢れて止まらないのだ。
泣いてないで何とかしないと、皆を助けられないと自分を叱責するが涙が溢れる。
「麻衣、落ち着こう……泣いてたら……助けられない……」
「う……ん……しっかりしろ、落ち着け……」
「落ち着け、落ち着け……」
自分たちに言い聞かせながら、あたしと麻衣は一旦身体を離した。
そしてあたし達は辺りを見渡す。
「……まず、どうする……?」
「まず、ナルとみんなを捜して……違う。こんな時、ナルなら取り掛かってる仕事を優先してる」
「うん。とにかくやるべき事をやってここを抜け出して、それで皆が見つからなかったら捜す。今、皆がどうなってるか考えも仕方ないからね」
「そうだね……」
二人で頬を叩く。
しっかりしろという意味も込めて、泣き出しそうな自分を叱責するためにも。
「──ナルは子供たちや桐島先生を説得しろって言ってたけ」
「うん……。でも暗示でトランス状態に入れてくれるナルがいない……ってことは、自分たちでやらなきゃいけないね」
「いつも夢を見てる状態になればいいから……その為には眠らなきゃ……」