第9章 忘れられた子どもたち
「……そういうことか」
「なに?」
「どうしたの?」
「なんでもない。どうやらぼくはぼーさんを見くびっていたらしいな」
どういうことなのだろうか。
あたしは首を傾げて麻衣を見れば、彼女も首を傾げてあたしを見る。
「まだ間に合う。とにかく行こう」
ゆっくりと階段を降りていく。
警戒しながらもゆっくりと降りて、麻衣のあとで扉をくぐろうとした時だった。
ガタンも音が聞こえ、なんの音だろう外を覗いてみると下駄箱が倒れてきていた。
それを見てあたしは思わず叫んで、麻衣を引っ張った。
「危ない!!」
咄嗟に麻衣を引っ張ったおかげで、麻衣はなんとか下駄箱の下敷きになる事はなかった。
「──麻衣、結衣。大丈夫か?」
「……だっ、だいじょうぶ」
「なんとか大丈夫だよ……」
「ナルは──」
そこであたし達はナルと手が離れてしまった事に気が付いた。
「手が……」
やばいと思っていれば、麻衣が下駄箱の向こうに手を入れて何かを探り始めた。
「出口、出口……」
麻衣が扉の向こう側を探る間、あたしは二階へと視線を向ける。
何もいないよね……と思いながら不安でいれば、麻衣が声を上げた。
「あ、あれ?入口のところ下駄箱で塞がれちゃったみたい」
「え、うそ」
あたしも入口部分に手を突っ込む。
なにか『トンッ』と触れて、入口が塞がっているのに気がついた。
「本当だ……」
麻衣と二人で手を探り入れていれば、何かが手に触れる。
手のような柔らかさにドキリとしていれば、ナルの声が聞こえた。
「でられるか?」
手を繋がれる。
よく見れば麻衣もナルに手を繋がれている。
「うん」
入口部分に頭を突っ込もうとして、あたした麻衣はゴンッと壁にぶつかる。
「ち……ちょっと待って。今通れそうなところ探して──」
そこで違和感を覚えた。
ほとんど入口は塞がれているというのに、ナルの手は何処からこっちに伸びているのだろうと。
「どうした?」
ナルの声が遠い。
離れたところから聞こえたような気がした。
目の前にいるというより、まるでもう一階へと降りているような距離の声。
その瞬間、背筋がゾクリとした。
カタカタと身体が震え、あたしと麻衣は顔を見合せてしまう。
「……ナ、ナル……」
「……ナル……?」