第9章 忘れられた子どもたち
「結衣さん、麻衣さん。ボクです」
「ジョン、運転できたっけ?」
麻衣の言葉にジョンは奇妙な表情になる。
「ええ……そう……やと……」
煮え切らない言葉に首を傾げる。
ジョンって運転できたっけと思っていれば、誰かに腕を引っ張られた。
「結衣おねーちゃん、麻衣おねーちゃん」
「ん?」
「どうしたの、マリコちゃん」
「ツグミがおかねおとしたんだって」
その言葉にツグミくんを見れば彼は泣いている。
「えー?どこで?」
「にかい。ぼくのちょきんなの。ごひゃくえんもあったんだよ」
「ありゃー、それはたいへんだ」
「にかいのいりぐちのところに、メダルみたいなのがおちてたよ」
「みにいっていい?」
「んじゃ、一緒にいったげる」
「あたしも行こうか。だから泣かないで、ツグミくん」
あたしは親指の腹でツグミくんの目元を撫でる。
彼はかなりショックだったのか、涙がポロポロと落ちていく。
「麻衣、結衣。勝手にフラフラ歩くんじゃない」
「でもちょっとだけ」
「すぐそこだから」
「ダメだ」
「ケチー」
二階に行くぐらい良いじゃないか。
そう思っているとツグミくんは怒ったようにそっぽを向いてしまう。
「いいもん!ぼくのだからぼくがいくもん!」
「でも一人じゃあぶないから、誰かついて行かないと」
「いやー!」
これは困った。
あたしと麻衣が苦笑していれば、ナルが咎めるようにツグミくんの名前を呼ぶ。
「ツグミくん。ここは危ないところなんだ。一人で出歩かせるわけにはいかない」
「ひっ……ひとりじゃないもん。おねえちゃんたちとタカトくんといくもん」
「ダメだ」
「ねえ、ちょっと上までだから」
「二階に行くだけだからさ」
「麻衣と結衣に子供を守る力があるのか」
そう言われると何も答えられない。
九字を切ることか、真言を唱えることしか力がないあたし達が子供を守れる力があるわけない。
それはわかっているが悔しいのものだ。
「でしたら、あたくしが行きますわ。あたくしと一緒に行くか行かないか、どちらにします?」
「どっちもいやー」
「ワガママはいけませんわ。もう暗いでしょう?子供だけで行ったら危険ですもの。ね?あたくしだけ連れて行ってくださいな」