第9章 忘れられた子どもたち
何か、いま一瞬だが凄くイヤな感じがした。
背筋が凍るような……なんでだと思いながら腕を撫でる。
「ダーメだ、こりゃ。めぼしーもんがないわ。危険な方法にたよるしかねぇみたいだな」
「ああ」
あたし達は廊下へと出ることにした。
めぼしいものはなにもない、危険な方法ということは火を付けて焦がすのかなと思いながらタカトくんと手を握って教室を出た。
最後に安原さんが出てくる。
そう思ったら彼は何故か足を止めたのだ。
「安原さん?」
「どうしたの、安原さん」
「どうしたの、おにいちゃん」
「どうしたの」
マリコちゃんとタカトくんを見て、安原さんは数歩後ろへと下がっていく。
「や、安原さん?」
「ど、どうしたの安原さん?ナル!ちょっと待って!ほら、ナルたち行っちゃうよ?」
「……谷山さんたち……車……」
「え?」
「車?」
「どうして車が二台あるんです!?」
どうして、車が二台なんだ。
それを理解しようとした瞬間、教室から火が吹き出して安原さんを飲み込んだ。
「い、いやああああッ!!」
「やぁあああ!」
「どうした!?」
あたしは慌てて教室へと飛びこもうとして、ぼーさんとナルに羽交い締めされるように止められた。
「安原さん!安原さんが!!安原さん!!」
「安原さん……安原さんが!」
「結衣、麻衣ダメ!離れて!」
「でも安原さんが!!」
「だって!」
「お願いですわ!無茶をしないで……!」
「結衣、やめろ!!」
ぼーさんに抱き込まれたまま、あたしはその場に座り込む。
「安原さん……」
涙が溢れて落ちていく。
喉から漏れるのは嗚咽だけであり、あたしは顔を手で覆いながら叫びそうになるのを必死に止めた。
教室は火の海だった。
数分間燃え続けていたが、やがてその火は吸い込まれるように何故か消えていったのだ。
「消えた……!」
「少年!」
ぼーさんが中に飛び込む。
そしてその体が固まった。
「──なんだこりゃ……焦げあとどころか中にあったもんが全部無くなっちまってる」
あたしは麻衣と真砂子と引っ付きながら中に入る。
焦げてもいない、燃えカスも残ってない綺麗に物が消えている教室だ。
「──どうやら、火で脱出路を探すのは無駄らしいな」