第9章 忘れられた子どもたち
「なっ、なにふざけてるの?げんにリンさんも──」
麻衣が知らない人の名前を言った。
誰のことを言っているんだと眉を寄せていれば、マリコちゃんとタカトくんが麻衣の服の袖を引っ張る。
「リンさんってだあれ?」
「だあれー?」
「えーと……?」
「おねーちゃんおかしーい」
「そういえば、麻衣は目を開けたまま寝るのが得意ですものね」
「おっ、起きてるもんっ。ちょっとボケただけじゃん!」
「ちょっと?大ボケですわよ。誰ですって?」
「だからあ!」
言葉が出てこない。
そんな麻衣に誰もが溜息をついてしまう。
「だれって言った……?」
「自分で言ったこと忘れないの」
あたしはため息を吐いてから、麻衣の額を指で弾く。
「大馬鹿者は無視しよう。ぼーさんここに結界をしけるか?」
「やってもいいが、そこまでする必要があるのか?」
「用心に越したことはないだろう」
「でも、結界の中に閉じこもっていれば危険は減るでしょうが、校舎から出られなければ行き着く先は同じじゃないですか?」
「少年に賛成だな。除霊にかかった方が早いと思うぞ。おれはここで干からびて死ぬのはごめんだからな」
「さいですね。ここは小さなお子もおるんやし、とになく外へ出ることを考えないと」
「安全策は分かるが、夜になって活性化すると厄介だ。ちと積極的に脱出する方法を考えねえか?」
「──そうだな」
ナルが珍しくボーさんの意見に賛成している。
「まず、脱出路を探ろう。幸いこの建物は木造だ。壁に穴を空けられないかやってみる。それでダメなら火を使う」
「燃やすのか?過激だな」
「焦がすだけだ。少しでも脆くなるように。それで駄目なら霊を追い詰める方法でいこう。特定の場所に追い込んで一気に除霊する」
「あいよ」
「とりあえず穴をあける道具を探そう。原さん、ついでに各教室の様子を見てもらえますか」
「わかりました」
あたし達は立ち上がると教室を見て回っていく。
壁に穴が開けられるものはないか、道具になりそうなものはないかと色んなところを探す。
引き出しを開けて、道具箱を開けてと繰り返すが良さげなものはなかなか見つからない。
「ダメ?」
「うーん。役に立ちそうなものはないですねぇ」