第9章 忘れられた子どもたち
「どっ、どーせおれは朝ごはん……」
「それはクロワッサン。──ちょっと苦しかったですね」
ぼーさんと安原さんのやり取りに吹き出してしまう。
あれだけ暗くて沈んが気持ちが、二人のやり取りで明るくなってきたような気がした。
麻衣も真砂子もジョンも笑っている。
ナルは相変わらず無表情だが、少し呆れたようにしていた。
「やだ、もお。やめてよーっ」
「ぼーさんも安原さんも緊張感ないなぁー」
喉を鳴らしながら笑っていると、麻衣と安原さんの間から手が伸びてウサギのカップを手に取る。
「これ、あたしのだよ」
知らない女の子がいる。
(……この子、だれ?)
その後ろに小さな男の子がいた。
「ウシさんのはタカトくんのでしょ」
この子達は誰だっけ。
ぼんやりと考えていれば、安原さんがあたしを見てくる。
「結衣さん、麻衣さん」
「えっ」
「へ……」
「どうしたんですか、ぼーっとして」
「そうだよ。結衣おねーちゃんも麻衣おねーちゃんもへんなの」
マリコちゃんがおかしげに笑う。
(そうだ、この子はマリコちゃん。あっちの子はタカトくんだ)
なんで忘れてたんだろう。
不思議に思いながらも、あたしは二人の小さな子供たちを見つめる。
「……そ、そだね。ごめんごめん、マリコちゃん」
「なんか、ぼーっとしてたみたい……」
「双子がぼーっとしてんのは、いつものことだよなあ」
「うっさいなあ!」
「うるさいな、もおっ。ハイ、タカトくんはこれね」
「ありがと」
麻衣は怒りながらもタカトくんにウシのカップを手渡す。
その様子を見ていると、胸が何かやらチクッとしたのを感じた。
何かが変だ。
そう思いながらも、何が変なのかは自分でも分からない。
「とにかく、じきに陽が落ちるぞ。なにか有効な対策を考えねーと」
「そうだな。とにかく絶対に相手の手に乗らないようにしないと……」
全員が黙る。
何か違和感を覚えているような感じがしているのだ。
あたしだけじゃない、全員が何か違うと思っている。
「──さっき死体を落としてきたのも一種の陽動だと思う。あれで全員が前後を見失って逃げ出していたら、恐らく誰かが消えていたんだろう」
「そりゃ、考えすぎじゃねーの?消えるってどうやって消すんだよ」