第9章 忘れられた子どもたち
「これがそもそも仏教に入って、生前の悪行の報いを受けて餓鬼道におち飢餓に苦しみ続ける霊をいう。身体はやせ細って、喉は針のように細くなり、なんとか食べ物を見つけても喉を通らない上──無理に食べようとすると食べ物が火に変わってしまって食べることが出来ない」
「ひど……」
何とも酷いものだ。
あたしは眉を下げてから口元を出て抑えてしまう。
「その為に常に空腹に苦しんでいるというわけだ。手足は枝のよう、腹は太鼓みたいに膨れた小鬼の姿で描かれるのが普通だな」
「……その餓鬼がいたの?上に」
「そういう風に見えただけだ。死んだ子供に餓鬼道におちるほどの罪があったと思えない。第一、餓鬼道なんてものおれは信じない。たんなる想像の産物だ。……ただ、死んだ子供たちはなにかに餓えているのかもしれん。それであんなふうに見えたのかも──」
「……ねえ?その……死体が落ちてくる前に誰かが天井板を動かしたよね?それをやったのってひょっとして……」
「餓鬼?」
「かもしれねえけど、どうかな。確実なのはここは危険だから早く出た方がいいってことだ」
沈黙が流れる。
痛いほどの沈黙にあたしは唇を少しだけ噛んでいれば、安原さんが勢いよく手を叩いた。
その音に思わず肩を跳ねさせてしまう。
「はいはい、少しリラックスしましょう。ペンギンのカップは誰でしたっけ?」
「あ、ボクです。すんません」
「いえいえ。ウサギは誰の?」
「……松崎さんですわ」
「あっと……」
ウサギのカップは綾子、ウシのカップさんはリンさん。
(二人は何処にいるんだろう……)
もし、ここから出れる方法が見つかったとして二人を置いていけるわけがない。
なんとかしても二人を見つけなければ。
「内心動揺してるな、少年。まだまだ修行がたりんのう」
「なにぶん若輩者でして。早く滝川さんみたいな素敵なおじさまになりたい」
「気持ち悪いからやめろ」
ニヤリと安原さんが笑う。
「へええ、そちらをとりましたか」
「あ?」
「気持ち悪いと抗議してくるか、まだ若いと来るかどっちかなーと。おじさんであることを認めましたね」
「おまえなー。どーせオイラは日本一さっ」
「──それは富士山」
「どーせ、おれは桃太郎の子分……」
「それはキジさん」