第9章 忘れられた子どもたち
「……いっやー……滅多に見られんもんを見ちゃったわ」
「だ、大丈夫?ぼーさん……」
「綾子とリンさんは?いたの──」
コト……という音がした。
天井から聞こえてくるのだが、なんの音なんだと誰もが上を見上げる。
何かが叩くような音に引き摺られるような音。
なんの音なんだと思った時、天井の板がスライドして何かが落ちてきた。
「いやーーーっ!!」
落ちてきたのは死体だった。
あたし達はあの教室から出て、玄関へと戻って火を囲んでから沈んだ表情を浮かべていた。
「……やっぱり、あれ死体だった……よね……?」
「あれで生きてるはずがねぇ。──大人だったぜ」
「──大人?」
「子供じゃなくて?」
「そう、大人。失踪したのは子供だけじゃねぇってことだな。──少年、水くれ」
「滝川さん、カップどれでしたったけ」
「トリケラトプス」
「けど、なんで大人が……」
安原さんが調べた内容は子供たちが失踪したという事件ばかりであった。
大人が失踪したなんて事は聞いてはいないが、校舎の天井裏には大人の死体。
「──もし、失踪した子供を捜しにここへ来た大人がぼくたちのように閉じ込められて消えたとしたら……恐らく二度とここへ捜しにこようとは思わないだろう。それで死体を放置してたんじゃないか」
「ありそうだな」
「はい、どうぞ。渋谷さんのはキツネでしたよね。それでリンさんと松崎さんは?」
「端まで見えたわけじゃねぇから、確実なこた言えんがいないようだった。……少なくとも生きた人間はいないように見えたな」
ぼーさんの言葉に麻衣と共に首を傾げる。
「……人間はって、じゃあ『なに』ならいたわけ?」
「人間じゃないのがいたの?」
「──はっきり見えたわけじゃねえが、おれの知ってる言葉で表現するならあれは餓鬼に見えた」
「餓鬼……?」
「餓鬼って……?」
聞き覚えのない言葉に眉を寄せる。
「子供くらいの大きさの鬼だ。梵語でプレタ、音写して薛茘多(へいれいた)。正確な意味は死者の霊ってことだな。漢文に翻訳するならたんに『鬼(き)』といったほうが正しい。鬼ってのは実際には死者の意味だからな。子孫が食べ物をそなえて供養してくれるのを待ってるから『餓鬼』という字をあてる」
ぼーさんの説明を聞きながら、あたしは眉を寄せた。