第9章 忘れられた子どもたち
「──ナル」
「どうした?」
「あれ……」
麻衣が指さしたのは天井。
天井は黒くなっていて、何かが蠢いているようにも見える。
「なんか……動いてるみたいに見えない?あれってもしかして……」
「どら」
ぼーさんが箒を手にする。
もしかして突くのだろうかと思ってギョッとしてしまう。
「ぼーさん!?」
「ちょっ……ぼーさん何する気?」
静止する声を無視してぼーさんは箒で天井を突いた。
「って、わあ!やめ──」
ハエのような虫が一斉に飛ぶ。
「やだっ……!」
「きゃあっ」
「いやっ……!」
大量の虫に思わず悲鳴を上げてしまう。
「──ジョン。結衣と麻衣と真砂子を連れて廊下に出てろ。少年も行け」
「ハイッ」
ジョンはあたし達を背で庇うように廊下に出した。
虫は教室の中でウヨウヨと飛んでいて、とてもじゃないが中に戻ろうとは思えない。
なんであんなに虫がいたんだろう。
そう思いながら廊下から天井を見上げてみる。
「普通一枚くらい動くやつがあるんだが……──これか」
ぼーさんは箒で天井を突きまわり、一枚の板がずれたのを確認した。
そしてゆっくりと板をずらした瞬間、とんでもない悪臭が鼻をつく。
「うっ……」
凄い臭いだ。
腐ったものをたくさん集めたかのような臭いに涙が出てしまう。
「……上みたいだな。どうする、ナル坊」
「確認しない訳にはいかないだろう。二人が上にいられるとも思えないが」
「……やっぱおれが行くんだよな」
「怖気付いたんなら、ぼくが行ってもいいが?」
ぼーさんとナルは机や椅子を積み上げて、天井に届くまでの高さを作った。
「こんなんで様子が見えるかね。やっぱライターはまずいかな」
「使わない方が無難だとは思う。中の空気も吸わない方がいいだろうな」
「あいよ」
ぼーさんは天井の中を見るつもりなんだ。
そう思うと、何か嫌な感じがしてしまって思わず止めてしまう。
「ぼーさん、やめた方がいいよ……」
「そうだよ。ぼーさん、やめて」
「ちょい、覗くだけ」
「でも」
「おれが乗ったら天井が落ちるよ 」
不安に思いながら、ぼーさんが天井を覗くのを見守る。
暫くしてからぼーさんは板を元通りにしてから椅子から降りて、深く深く息を吐き出した。