第9章 忘れられた子どもたち
「五月十八日……」
黒板にはそう記されていた。
日直という字の下には『たけろう』という子供の字。
「廃校になったのって五月だっけ」
「そうだな」
「ねえ、出席簿があるわよ」
綾子が教卓から黒い出席簿を取り出していた。
かなり埃を被っているのだが、それを叩いて中を開く。
名前が書かれていて日付がある。
何処にでもある出席簿だ。
「十八人全員いるね」
「最後の日付が五月……の──汚れちゃって読めないや」
「黒板の日付と同じ、十八日ですやろね」
「そうとは限らないよ。あの日付と当番って、一日の終わりに次の日のぶんに書き直してた覚えがあるもん。ね、結衣」
「うん……あたしもその覚えがある」
「やったら、十七日かもしれへんわけですね」
あたし達は出席簿を覗く。
日付が続いているのだが、十六日までが記されている。
「十八日が水曜ってことは、十五日が日曜だから──あれ、十六日までしかない」
「以降の日付には出席が取られてないね……」
「と、いうことは……十六日の出席をとった以降に何かあったわけだ。荷物も勝ってた動物も全部残して、学校が放置されるようなことが」
「うん……あれ?あー、これ日誌だあ」
「ほんとだ」
あたしは日誌を手に取ると、上に積もった埃を叩いて落としながら開こうとした。
「くっ付いてる……」
破れないようにとページを開けば、子供の字で色々と書かれていた。
「これが最終ページかな。なんとか読めそう」
「だね」
「『五月十六日月曜日、当番四年、みちやまあゆみ』」
「てことは、やっぱり十六日が最後かあ」
「えっと『あしたはいよいよえんそくです』だって」
「そっか、十七日は遠足だったわけね。学校以外の場所に集合だったんだわ。登校しないことが分かってたから、黒板には十八日の日付と当番を書いておいたんだ」
「もしかして、その遠足でなにか起きた……?」
「かもね──ほら、ここ。『バスの席順でちょっとケンカになりました』」
バス、遠足。
そこから思いつくのは事故という言葉だった。
「バスで事故で起きたりとか……」
「それで生徒たちが……ひょっとしたら、全員死んじゃって──それで廃校……?」