第9章 忘れられた子どもたち
「廃校になったという話だったが、たんに生徒が減っただけとは思えはい。きちんとした手順を踏んで廃校になったのなら飼っていた動物を放置しては行かないだろう。しかも──もしも置き去りにされたせいでこの犬が──犬だと仮定して、飢えるなりして死んだのだとしたら大人しく箱の中で死ぬと思うか?」
その言葉に思わず息を飲む。
「箱は段ボールだ。軽いものだから犬が暴れれば動く。それがきちんと教室の隅に残っている。この犬は飢えて暴れる暇もなく死んだと思うね」
「でも、なんで」
「……さあ」
「……じゃあ、もしかしてあの水槽やカゴの中にも……?」
ゾクリと背筋が震える。
あの水槽やカゴの中にも死骸があるのではないか……そう思うと背筋がよけいに震えていく。
「も、もう出ようよ。次の教室にいこう」
「……あまり、ここにいたくない……」
「そうね……」
あたし達は飛び出すように教室を離れた。
そして隣の次の教室に入ると、そこには木製の机や椅子が綺麗に並んでいた。
「ここが実際に教室として使われていた部屋のようだな」
「──机が十八個。……生徒が十八人だったんだね」
「村長が揃えてくれた資料によれば、十八人中十四人がダム工事のせいで一気に引っ越して、結局廃校になったということだったんだが」
「ふうん……机は片付けなかったんだね。あれ?」
「どうしたの、麻衣」
「……机の中、見て」
麻衣に言われて、あたしは机の中を見て目を見開かせた。
「なんで……」
「……ねえ、机の中に道具が残ったままだよ」
机の中には筆記用具が教科書が入っていて、麻衣の話を聞いた綾子とジョンは慌てて机の中を確認していく。
「こっちもよ」
「ここもです」
中から教材を引っ張り出す。
算数の教科書、国語の教科書に地図帳に筆記用具。
古びているがあんがい形がちゃんと残っている。
「ほとんどの机の中に荷物が残ってたわよ。転校したり廃校になって学校を出ていくのに持ち物を置いてく?」
「普通、こんなに残したりしないよね……」
「……やっぱり、村長さん達の言葉は信用できないってことだよね」
壁には習字の張り紙、棚には荷物が残っている。
黒板には日付が書かれている。
「──本当に何もかも残ってるね。まるで、突然全員死んじゃったみたい」