第9章 忘れられた子どもたち
「どうしたの?」
「ナル?どこに行くの」
「外にファイルを置いてきた。取ってくる」
「えー?濡れるよ」
「ここまで濡れたら同じだ」
確かにそうだ。
あたし達はもう服までびしょ濡れだから、今更濡れても同じである。
それにしてもファイルが気になるか。
なんて思いながら、ため息を吐き出していればナルがドアノブを握ったまま固まっていた。
「どうかした?」
「ドアが開かない」
「ええっ?」
「開かない?」
「非力ねえ」
「たてつけが悪いんだよ、古いから。両側から押せば大丈夫なんじゃ──」
麻衣とナルが同時にドアを押す。
だけど軋んだ音がするだけで、扉は開かないのだ。
「動かないよ」
「そんなわけ……」
麻衣と変わってドアを押すがビクともしない。
隣でナルが扉に体当たりするが、それでも扉は動かないのだ。
「動かない……」
「ど、どうしよう。カギがかかっちゃったのかな」
「麻衣さん、結衣さん。かわっとくれやす」
ジョンが変わってナルと共に扉を押す。
それでも扉がビクともせずに、開くことがなかったのだ。
「──開かない」
ざわりと胸が騒めく。
「──やだ。なーにマジになってんのよ。湿気を吸って木がちょっときつくなっただけでしょ。ドアがダメならそのガラスを割って外に出ればいいじゃない」
「そ、そっか。そうだよね」
綾子は足元に転がっていた瓶を手に取る。
「いいもの見つけたわ。これ投げてみましょ。そこどいてっ」
綾子が瓶を投げつけ、ガラスに当たる。
だが瓶だけがしっかりと割れて、ガラスがびくもとしなかった。
「……うそ。何ともない」
普通は窓ガラスが割れるはず。
それなのに、何故か割れていなくて誰もが唖然としていた。
「ほ、他にも窓いっぱいあるよ。廊下とか、あっちを試してみよ?」
「そ、そうね」
「他なら割れるかも」
「勝手にウロウロするな」
あたし達が廊下へと行こうとした時、ナルがそれを止めた。
どうして……と思いナルを見たが、彼の瞳は真剣だった。
「ぼくとリンで下を調べる。ジョン、二階を調べてくれ」
「ハイです」
「麻衣と結衣はジョンと一緒に行け。絶対に離れるな。松崎さんも一緒に行っていただけますか」
「い、行ってあげようじゃないの」