第9章 忘れられた子どもたち
「おれにもチョーダイ」
ぼーさんとジョンは帰ってきたのだが、暑さのせいで二人とも汗をかいている。
そんな彼に真砂子がマグカップを手渡した。
「どうぞ、滝川さん」
「さんきゅー……って、なんだこりゃ」
ぼーさんが受け取ったマグカップにはトリケラトプスのイラストが印刷されている。
「それが滝川さんのカップですわよ」
「あたしのはコレー」
「あたしはひつじ〜」
麻衣はカエルのコップ、あたしは羊である。
「で、これがナルでこっちがリンさん。これは安原さん、これがジョンだよ」
ナルはキツネ、リンさんは牛で安原さんはカニでジョンはペンギンのカップ。
どれも可愛らしいものであり、まるで小学生の子が使いそうなものであった。
「……昨日これを選ぶのに時間をくってたんだな、お前らは」
「間違えなくていいでしょ」
「可愛いよーね」
ぼーさんのなんとも言えない表情にケラケラと笑う。
昨日の買い出し、ぼーさんは車の中で待っていたのだがあたしと麻衣と綾子と真砂子はスーパーへ買い物をしていた。
その時に麻衣がこのコップ達を見つけて、あたし達はじっくりと時間をかけながら選んだのである。
「か、かわいらしくてよろしいどすね」
「どんな局面でも遊び心を失わないのはいいことですよねー」
ナルは無表情でお茶を飲み、リンさんは無言でコップを見ている。
似合わないけれど、この可愛らしいコップでお茶を飲むのがアンバラス過ぎて面白すぎた。
特にナルとリンさんは。
「可愛いでしょ、リンさん」
「……そう、ですね」
リンさんは複雑そうな顔をしながらも、コップに口をつける。
ちなみにリンさんのコップを牛さんにしようと言い出したのは、あたしである。
ケラケラと笑っていれば、地面に影が出来ていた。
暗いなと思いながら上を見上げれば、灰色の雲が頭上を覆っている。
「雲が出てきたね」
「ひょっとして雨ですやろか。降るいう予報はおまへんでしたけど」
「降ったら面倒だ。今のうちに昼飯の買い出し行こうぜ」
「そうですわね」
「じゃあ、ついでにちょっと聞き込みをしてきます」
「ここにあるものを買ってきて」
相変わらず綾子はママだ。
なんて思いながら、買い出しに行くぼーさんと真砂子と安原さんを見送った。