第9章 忘れられた子どもたち
「ねーえ。休憩にしない?」
「わっ、もう十時かあ。今日も暑くなるのかなあ」
「なりそうだよねえ……今は涼しいけど」
時計を確認していれば、ふわりと風が頬を撫でた。
なかなか強い風であり髪の毛がなびいてる。
「ん?風が出てきましたね。マイクスタンドの重し確認してきます」
「あたしも行く」
「あたしも」
「急げ」
さも当たり前のようにナルは石段に腰掛けながら、あたしたちにそう言ってくる。
「自分は動かないわけね」
ナルが自分で動いているのを見たことがない。
たまには自分で動けばいいのにと思いながら、マイクスタンドの重しを確認していく。
不安定な所はその辺の石を拾って調整する。
「よっこいしょ……っと」
「うん。こんだけ石段乗っけてたら倒れないでしょ」
「だね」
手のひらの砂を払っていた時だ。
『──あ──』
微かな声が聞こえたような気がした。
思わず麻衣と顔を見合せてから、声がした方向を探すように顔を上げる。
「二人とも、どうしかしました?」
「いま、なにか聞こえなかった?」
「声みたいなのが聞こえたような……」
「いいえ……?」
「あれえ?気のせいか──」
麻衣の声に被さるように、また声が聞こえた。
あたしと麻衣と安原さんは顔を見合せてから固まる。
「……聞こえた?」
「……人の声みたいだったね」
風のせいで周りの木々がザワつく。
その音が少し気味悪く感じていれば、安原さんが辺りを見渡しながら呟いた。
「行きましょう。──ちょっとヤな感じだ」
「うん……そうだね」
「戻ろっか……」
三人で早足になりながら、あたし達はベースへと戻った。
「結衣、麻衣。ジュースにします?ウーロン茶?」
「ウーロン茶ー」
「あたしもー」
「そういえばここの水道の水飲めないんだよね。ペットボトルもっとあった方がいいのかな」
「そうですわね。お昼の買い出しの時にでも買ってこないと──はい」
「ありがとう」
「ありがとう、真砂子」
真砂子からあたし達はプラスチックのマグカップを受け取る。
ウーロン茶を飲めば、カラカラに乾いていた喉が潤っていくのを感じた。
やはり暑くなってきた。
動けば動くほど暑くなるし、汗が肌を濡らして気持ちわるい。