第9章 忘れられた子どもたち
「わたしらはここらの村長で、松沼と申します。これは助役の畑田と。実は……少しばかりうちの村は困ったことを抱えておりまして。霊能者でも呼んだ方がと話していました時、バンガロー泊まっている客がどうも専門家らしいと。ここの事務所の者に聞きまして……」
「困ったこと、というのは?」
暑さのせいで松沼さんは何度も汗を拭っている。
そして居心地が悪そうに、何度も身動ぎをしていた。
「それがですね。実はこの近くに廃校になった小学校がありまして。そこでその……常ならざぬことが起こっているようなのです」
「──失礼ですが、それだけでは何故お困りなのか分からないんですが」
「はあ……それがですね……」
困ったように言い淀んだ松沼さんの後ろで、畑田さんが少し立ち上がってから声をはりあげた。
「──これは、くれぐれも内密にお願いしたいのですが」
「依頼人の秘密は守ります」
ナルの言葉に、松沼さんと畑田さんは顔を見合せて頷きあった。
「……その廃校で幽霊を見たと、そのように言うものが多いわけです。詳しいことは存じませんが、人魂を見たとか祟りがあるとか。なにせ古い建物ですから、危険のないように取り壊すなりしたいのですが、そんな事をしたら祟られるに違いないとそういう者がおりまして」
「廃校になったのはいつですか?」
「五年前です。正確には五年前の五月に」
「妙な時期に廃校になったんですね。五月……ですか?」
たしかに妙な時期である。
五月に廃校になるのは珍しいし、普通なら新学期が始まる前に廃校になるものだと思う。
「はい。ここらは過疎化が進んでおります。子供の数も減って、小学校と言いましても生徒が全校で二十人に足りない分校でした。それで数年のうちには本校に合併という話もあったのですが──それが突然廃校になりましたのは、学区の生徒がどっと転出しましたからで。それというのも、ダムが出来ることになりまして……」
「このダムですか?」
「さようです。実は廃校の近くにリゾート施設をという計画もありまして。しかし、あんなものが近くにあるうえ、幽霊が出るなどという噂でもたとうものなら──ですから、何としても内密に願いたいのです。それと確実な解決を」
なんか、美山邸の時と似ている。
内密に解決をしてほしい……似ていると思ってしまった。
