第9章 忘れられた子どもたち
知っているというのはどういうことだろう。
眉を寄せていれば、感情の乗っていない声が飛んできた。
「リン」
ナルのいつもの抑揚のない声。
あたし達はその声がする方に慌てた振り向き、リンさんも慌てて振り向いた。
「ここだったのか。どうだった?」
「まどかが一緒ですから大丈夫だそうです」
「そうか」
相変わらず感情が見えない。
お兄さんが亡くなったというのに、何故ここまで冷静なのだろうか。
「ご愁傷さま。見つかりそうかい?」
ぼーさんの言葉に、ナルは淡々と答える。
「……どうも。水の透明度が低いから難航しそうだな。湖底には障害物が多いようだし」
「ダムだからなあ……早く見つかるといいな」
「多少の覚悟はしてる。だから先に帰った方がいいと思うが?」
「悪いな。勝手にさせてもらう」
ここに来てから、ぼーさんとナルは言い争いではないが多少の対峙をしている気がした。
なんて思っていると声が聞こえた。
「……あ、あのう……」
二人の年配ぐらいの男性二人がこちらに歩いてきているのが見えた。
ハンカチで汗を拭いながら、しんどそうに息を吐き出している。
「渋谷サイキック・リサーチの方ですか?」
「──そうですが」
「霊能者の方とか……」
「それに近いものではありますね」
「失礼ですが君は……」
「渋谷サイキック・リサーチの責任者ですが」
「こ、これは随分お若い──」
「どうも。ご要件をどうぞ」
ナルの冷たく感情の乗ってない声に、お爺さん達は顔を見合せた。
「お取り込み中の所を申し訳ないんですが、是非助けて頂きたいことがありまして」
ここまで来て依頼なんて。
あたしとぼーさんは顔を見合せて、思わず肩をすくめる。
「なんでしょう」
ナルのその言葉に珍しくリンさんが口を挟んだ。
「ナル、今は」
「かまわない」
「しかし」
「どうせ待っているだけですることがない。──依頼の内容を伺います」
てっきり断るかと思っていた。
それなのにナルは彼らを受け入れて、バンガローの中へと通したのである。
あたし達は少し離れたところでナルとお爺さんたちを見る。
この状況下で依頼を受けるのだろうかと思いながらも、あたし達は時折何度か顔を見合せていた。