第9章 忘れられた子どもたち
小高い岸辺の木々に、ナルがいた。
無表情に木に背を預けながら腕を組んで、ダム湖を静かに眺めているナル。
「ナル」
あたしが名前を呼ぶと、彼は面倒くさそうに視線を逸らした。
「──ねえ……あのダイバー……呼んだのはナルなんでしょ?」
麻衣が恐る恐ると聞くと、ナルはこちらへと顔を向ける。
相変わらずの無表情なもので、その顔に眉を寄せていれば淡々とした声がかえってきた。
「ああ」
「死体……を捜してるって聞いた」
「もう噂になってるのか」
軽くナルが溜息をつく。
「……ナルは、ここを捜してたんだよね。ってことはし……死体を捜してたってこと……?」
「──そうだ」
「じゃあ……もしかしに、地図を広げて考え込んだり旅行に行ってたのってこれの為?死体を捜す為だったの?」
あたしの問にナルはまた抑揚のない声で『ああ』と答える。
そこで胸にストンとなにか落ちるような感覚があった。
妙だと思っていたのだ。
あんなにしょっちゅう出掛けているのにも関わらず、観光名所に行っている様子がなかった。
そもそも旅行の目的は観光ではなかったのだ。
ナルは気が乗らないと仕事はしない。
儲けようなんて感じもないのは、もしかして死体を捜す為だけにオフィスを開いたからだろうか。
だから目的が果たしたらオフィスは必要ないということで、閉鎖すると言ったのだろうか。
(それだったら、全てが繋がる……)
ナルの目的が分かった気がした。
「……あの……どいう事情なのか聞いてもいい?」
「──おまえには関係ない」
「それはそうだけど……どういう関係の人?誰なの……?」
ナルはまた淡々と感情のない声で答えた。
「兄」
バンガローに戻り、あたし達の話を聞いた皆は愕然としていた。
「死体!?」
その言葉にあたしと麻衣は頷く。
「ナルのにーちゃんが?この湖に?」
「うん……」
「ナルがそう答えたよ」
「死んでいたのか……」
ボソリとぼーさんが呟く。
「え?」
「いや──なんでもない」
ぼーさんは気まずそうにジョンと安原さんを見る。
その態度が何故がイライラとしてしまい、眉間に皺を寄せてしまう。
「今、ぼーさん『死んでたのか』って言ってたよね?どーいうこと?」
あたしが詰め寄るように聞くと、ぼーさんは狼狽える。