第9章 忘れられた子どもたち
「じゃあ、あんたが料理する?」
綾子の勝利である。
麻衣は小さな声で『できません』と呟き、あたしは味噌汁をチェックしながら苦笑を浮かべた。
「つべこべ言わずに行っといで。あの二人、昨夜だって食べたか怪しいんだから」
「じゃあ、あたしも着いていこうかな。綾子、任せていーい?」
「いーわよ。どうせあともう少しで出来るし。あのウジウジ娘を引っ張って行って。あとついでに坊主達にも声掛けてきて」
「「はあい」」
バンガローを出れば、麻衣はブツクサと文句を言う。
そんな妹に苦笑を浮かべながらも、あたしも少し億劫な感じがしていた。
なにせバンガローに行く度に嫌味を言われているのだから、そりゃ嫌にもなるし億劫にもなる。
せめてリンさんが出てきてくれたら、嫌味は言われずに済むんだけどね。
なんて思いながらナルたちがいるバンガローに近づいた時、ぼーさんの声がした。
「──白黒はっきりさせておきたいんだがな」
バンガローの玄関口でぼーさんとナルが会話をしている。
「ヒマがない」
「それじゃあ、みんな納得するわけがねえだろうが」
「納得してもらいたいと思ってない」
「あのなー」
静かに近寄ったつもりだが、草をふむ音で二人がこちらを振り返った。
「あ」
「あー……えっと、取り込み中だった?ごめん」
「いや、なんだ?」
「朝ごはん……食べる気があったらおいでって綾子が」
「──放っておいてくれないか」
冷たい言葉だった。
感情もない温もりもない言葉に苛立ちを覚えたが、それより先に麻衣の怒りが爆発しかけていた。
「あっそ。そんだけ!じゃましてごめん!」
「あ。ちょ、麻衣!」
「麻衣!」
「麻衣、待ってよ」
「待ってて。一緒に戻ろう」
慌ててぼーさんと二人で麻衣を追い掛ける。
その道中で後ろを振り返りナルを睨むが、彼はそ知らぬ顔であった。
「……なにか用があったの?」
「こっちはな。ナル坊は聞く耳持たんとよ」
どんだけ人と関わりたくないんだ。
溜息を吐き出しながら、ナルがいるバンガローを離れていると前の方からリンさんが歩いてきていた。
「リンさん……」
彼はこちらに会釈だけするとバンガローへと向かう。
「ナル。二、三日中に向こうを発つそうです」