第9章 忘れられた子どもたち
あたしと麻衣と真砂子以外は皆大人。
彼らは彼らなりの生活や人間関係があって、高校生であるあたしたちと遊ぶというのも中々ないだろう。
(はあ……なんか急に寂しくなってきた……)
どうすればいいんだろうと、ウジウジと悩む。
「結衣さん、麻衣さ……」
ジョンが何かを言いかけた時、綾子の怒号が響いてきた。
「ちょっと!いつまで油売ってんの!田舎のお店は閉まるのが早いんだからね!」
怖い形相の綾子に、あたしたちは顔を引き攣らせる。
「はあい。いま行きます!」
「ついでに固形ブイヨンも買ってきて」
「はいはいはい」
「はいはい、わかりましたよー」
「投げ遣りの返事をしないっ!」
「「「イエッサー」」」
綾子はママだ。
だが口煩い、めんどくさいママであると思いながらあたし達はぼーさんの運転で田舎のスーパーまで向かった。
ナルとリンさんはあたし達を無視する事に決めたらしい。
晩御飯ができた時に、綾子に『聞いてこい』と言われて恐る恐ると彼らのバンガローに向かった。
『ご飯、食べる?』
聞きに行けば不機嫌そうなナルが出てきて、後ろでは申し訳なさそうなリンさんもいたが、彼らの返事は『要らない』であった。
仕方なしに、ナルとリンさん以外のメンバーで夕食を食べた。
ぼーさん達男連中は夕飯を食べ終えたらそそくさとバンガローに戻ってしまった。
「なんだかなあ……」
「なんだかねぇ……」
お風呂の順番を待つ間に、あたしと麻衣はデッキに出てぼんやりとしていた。
田舎の夜風は案外と涼しくて、心地よく思っていると真砂子が声をかけてきた。
「そんな所でぼーっとしてると、ヤブ蚊の餌食ですわよ」
「大丈夫、防虫スプレーしてるから」
真砂子はブタの形をした蚊やりを手にしている。
「真砂子もしてきたら?蚊に刺されちゃうよ」
「平気ですわよ。蚊は血の気の多い方へいくものですもの」
「そりゃ、あたし達のこと言ってんの?」
「……血の気が多くて悪かったね」
「あら、悪いなんて言ってませんわ。ヤブ蚊に好かれて良かったですわね」
「ぜんぜん嬉しくない」
「蚊には好かれたくないやい」
クスクスと真砂子は笑う。
最近、真砂子はあたし達の前でこうやって笑うことが増えた気がする。