第9章 忘れられた子どもたち
その後、麻衣は果敢にもナルとリンさんに食事はどうするかと訪ねに行った。
戻ってくるのをぼーさんとジョンと待っていれば、しょげた麻衣がフラフラと戻ってきた。
「ナル、メシどうするって?」
「勝手にするから構うな……だって」
「ふーん」
「やっぱしか。あの二人、あんまり人とご飯食べるの好きじゃなさそうだよね」
調査の時も別々に食べていた。
騒ぐのが嫌なのか、騒がれるのか嫌なのか知らないけれど。
「……あのさー」
「うん?」
「真砂子がもう会えないかもしれないから残れって言ったんだー」
「──そうか」
「オフィスを閉めちゃったら、たしかに、もう会うこともないもんね」
「そうだね。あたしたち、ナルとリンさんの家も電話番号も知らないから……」
だから、もし今日残らないと言ったら二度と会えずじまいだったと思う。
ナルから連絡があるとは思えないし、リンさんもきっと連絡はしてこないだろう。
仕事以外で彼らと会ったことがない。
まず、仕事以外の顔も二人揃って知らないのだ。
「……なあ。これだけは覚えておかんといかんわな」
「なにが?」
「別れのない人間関係はない」
ぼーさんの言う通りだ。
家族であろうと、友達であろうと、知り合いであろうと、どんなに親しくとも『死別』という別れが来る。
「よくよく考えたらさ……あたしと麻衣、ぼーさんの家もジョンの家も知らないなぁ」
「オフィスで会うだけで、調査の時一緒で。それ以外の時間、皆が何処で何してるのか全然知らないんだよね」
オフィスが無くなったら、皆とは会えない可能性がある。
一緒に仕事をする仲間であり、一緒にいろんな経験をしてしたけれど『友達』かと聞かれたらそうじゃないかもしれない。
仕事以外の付き合い方をしていない。
それでも別に良いのかもと思って、あたしは皆のことをあまり聞かなかったし自分のことも話していない。
(ぼーさんのこと、もっと知りたいと思ったけど……聞かなかったなあ……)
たぶん、皆もあたしや麻衣と同じ。
よく考えてみれば、あたし達は呆れてしまうほどにお互いのことをよく知らないのだ。
「どうした、双子揃ってボケッとして」
「え、あ……ううん、なんでもない」
「ううん、別に……」
今から慌てて『友達になって』なんて言い難い。