第9章 忘れられた子どもたち
突然のぼーさんの言葉に、あたしと麻衣は『へ?』と言いながら彼の方へと振り返る。
「だから、この夏は投げた。バンガローとるけど泊まるやつは手ぇあげろ」
「ぼーさん、邪魔だ」
「お前の都合ばっかり言われても聞けねえな。なに?全員帰るわけ?」
なにがなにやら。
あたしと麻衣と綾子は顔を見合せ、どうするべきかと悩んだ。
ナルは帰れと言った。
恐らくあたしたちが居たら邪魔なのか、それとも都合が悪いかなのだろう。
(帰れとは言われたけど……帰りたくは無い……)
なんだが、このまま帰ったら駄目な気がした。
そう思っていると、安原さんとジョンが手を挙げる。
「残ります」
「真砂子ちゃんは」
「……あたくしはそもそも残るつもりでしたわ」
「よっしゃ。結衣と麻衣と綾子は?」
残るべきな気がする。
そう思ってあたしは手を挙げた。
「残る」
「結衣!?」
「このまま帰るのもなんか嫌だし、あたしは残るよ。麻衣と綾子は?」
「ど、どうする麻衣?」
「えっ、どうするって……」
悩んでいる麻衣の腕を真砂子が触れる。
そして小声で麻衣へと囁いた。
「残るって言いなさい。このまま帰ったもう会えないかもしれませんわ」
会えない……と言うのはナルにということだろうか。
何故、彼に会えないのだろうかという謎はあったが今は聞くべきじゃないかもしれない。
そう思ってあたしは口を噤んだ。
「の、残りたい」
「てことで双子は残りまーす」
「宿泊費は出世払いにしといてやるよ」
ぼーさんはぐしゃりとあたしと麻衣の頭を撫でる。
彼の言葉はとても助かる。
バンガローのお金を払えるほど、あたしと麻衣のお財布は潤ってはいない。
「ほんとにこんなとこに残るのお?ホテルもないのよ?虫だってすごいんだから」
「んじゃ、綾子は帰るのか?」
「残るわよっ!」
てことで全員残る事に。
ナルは不機嫌そうにしているが、訳も言わずに『帰れ』と言う方が悪い。
なんて思いながらも真砂子の言葉を思い出す。
『もう会えないかもしれませんわ』
結局全員が残ることになり、ぼーさんがバンガローを借りてきてくれた。
とりあえず一泊、もしくは二泊するだろうという話であり、女四人に男三人に別れてバンガローを借りた。