第9章 忘れられた子どもたち
「そりゃ、クラクションが聞こえないわけだ……」
やっぱりぼーさんの車の方が楽しそう。
だってリンさんもナルも全然喋らないし、真砂子も大人しい。
あたしは騒ぎたいほうの人間だ。
静かな場所はむず痒くなるから苦手なんだと思いながら溜息を吐き出した。
「麻衣、あとで変わる?静かで楽しーいよ」
「いやあ……今回は遠慮しとこうかなあ」
「大好きなナルと居られるんだぞ」
「静かすぎるのはちょっと……」
なんて話ていれば、安原さんが地図を広げて道を探していた。
「とにかく県道まで戻らないと。えーと……このまま真っ直ぐ奥にいくとキャンプ場があります。そこから県道に戻る道に出られますよ」
「それしかないわな。車の方向を変える場所はないし」
もし、この時道を間違えていなかったら
あたしたちは今も何もしらないままだったのだろう。
「次は道に迷うことはないね」
「そうですわね」
次はリンさんが先行して運転している。
後ろからはぼーさんたちの車が着いてきているので、今回は道に迷うことはないだろう。
砂利道を抜けて川辺にあるキャンプ場を過ぎて、そしてアスファルトの道路に戻った時であった。
「リン、止まれ!」
突然ナルが叫んだ。
「ナル?どうしました?」
「ナル、どうしたのさ急に……ナル?」
ナルは無言で車を降りてしまった。
そしてガードレールのほうに立っていて何かを見ている。
ガードレールの下は急斜面を隔てて広い湖になっていた。
周囲は緑深い山に囲まれて、その山が岬のように、ちょっと張り出した向こうにコンクリートの線が水をせき止めたいるのが見える。
「具合でも悪くなったのかな?」
「様子を見てきます」
リンさんが車を降りて、あたしも気になって車を降りる。
すると麻衣までもが車を降りていてナルに駆け寄っていた。
「ナル!だいじょうぶ?」
麻衣の言葉にナルは返事をしない。
「どうしました」
リンさんも声をかけるが、返事をやはりしない。
ナルはただ湖を見開いた瞳で見ているのだ。
「ナル?」
返答はない。
ナルはガードレールを掴んで、身を乗り出すように屈みこんで湖を見ている。
するとリンさんが、はっとしたように叫んだ。
「──ここですか!?」
「……やっと見つけた……」