第9章 忘れられた子どもたち
「結衣だから、こちら側に乗ってもらったんですわよ」
「はあ?なにそれ」
真砂子があたしの袖を引っ張る。
なんだろうと思っていれば、真砂子があたしの耳元で小声で喋った。
「リンさんを見れば分かるでしょう」
その言葉に首を傾げる。
リンさんを見れば分かると言われて彼を見るが、ただ珍しく機嫌良さげに運転しているだけだ。
「分かりませんの?」
「わかんない」
「……鈍感ですこと」
「はあ!?」
「結衣、うるさい。というか、ぼーさんの運転は危なっかしいな」
ナルの言葉にあたしは後部座席から前を見る。
リンさんの車の前をぼーさんの車が走っているのだが、何故か横揺れしていたりしていて、しばらくすればクラクションの音が響く。
前の車を煽っているようにしか見えない。
何しているんだがと思いながら、あちらはやっぱり楽しそうだなと思った。
「あれ?ぼーさんの車、変なところ曲がったよ」
リンさんがクラクションを鳴らす。
だがぼーさんの車はそれを無視して違う道を走っていくので、リンさんが同じ道を曲がる。
「近道でもあるのかしら」
「さあ……?」
しばらくして……。
「ちょっとお、ここどこよ!」
「お前が騒ぐからだろーが!あの状況でどうやって標識を見ろってんだ!」
「方向音痴」
「ここから歩いて帰るか?」
あたしたちは完全に道に迷っていた。
ぼーさんの車に着いて行ったら、砂利道になっていて気が付けば針葉樹の山である。
迷子になってないか。
あたしが呟けばリンさんとナルがしかめっ面になり、真砂子は溜息を吐き出したのを覚えている。
「松本のほうを通るはずなのに、そちらに行かないのでおかしいと思いましたわ」
「完全に違う道いってたもんねぇ」
「分かってたら教えてくれよ。結衣ちゃん、真砂子ちゃん」
「リンさんがクラクションを鳴らしましたわよ。それでも無視なさるから近道があるのかしらと言ってたんですの」
「なにがあったのさ。前の車煽ったりしてたし」
「それがさぁ……」
麻衣が言うには、綾子がトロトロと車が走るものだから前の車を抜けとクラクションを鳴らしたりと大騒ぎになっていたらしい。
綾子はがなり倒すし、ぼーさんはヤケクソで大音量でおかしな音楽をかけていたとのこと。